北欧4か国がCV90歩兵戦闘車870両を共同調達!IFVの共通化へ前進

©BAE Systems

北欧のスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、リトアニアは歩兵戦闘車の共通化を図るため共同でスウェーデン製のCV90歩兵戦闘車数百両を購入する事を発表した。

4月22日、スウェーデンのウルフ・クリスターソン首相とリトアニアのギンタウタス・パルッカス首相の間で行われた二国間首脳会談後の共同記者会見で両首脳はスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、リトアニアの4か国共同でCV90歩兵戦闘車約を購入する計画であると発表した。現在、購入と協力に関する意向表明書を起草中で、春の後半に正式に意向書に署名する予定だとしている。北欧およびバルト三国ほぼ全てにCV90が配備されることで、共同防衛の強化、相互運用性の向上、そして物資の安全性確保につながると考えられており、クリスターソン首相は「今日の防衛力強化は、明日の自由への投資です。政府はCV90の協調調達に大きなメリットがあると考えています。納入の迅速化、コスト削減、そして両国の防衛産業の連携強化につながるからです。CV90協力に関する意向表明書は現在作成中であり、スウェーデンは共同安全保障の強化に向けた具体的な一歩を踏み出すことを期待しています」と述べた。 この合意の正確な金額は明らかにされていないが、調達数は4か国合わせて最大870両にのぼるとされる。その場合の総調達コストは80億ユーロに達する可能性がある。さらに、4か国は、整備や兵站の複雑さを軽減するため、共通の制服の使用、統一された155mm砲弾やプラットフォームの開発など、武器や装備の標準化を推進している。

CV90は北欧諸国の標準歩兵戦闘車に

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開発元のスウェーデンは現在550両のCV90を保有。隣国のノルウェー、フィンランドもそれぞれ100両程を保有している。今回、リトアニアがそこに加わる。リトアニアは2024年10月に100両のCV90の調達を発表していた。今回、共同調達を発表した4か国以外にもエストニアが80両、デンマークが45両のCV90を保有している。リトアニアもここに加わる事で、CV90が北欧諸国の標準歩兵戦闘車になったといってもよいだろう。バルト三国は東欧のイメージがあるが、国連が2017年に三か国を北欧に分類している。ちなみにバルト三国の残りの一国ラトビアは周辺国がCV90を採用する中、2024年11月、オーストリアとスペインが共同開発するASCOD歩兵戦闘車を採用している。

CV90歩兵戦闘車とは

CV90(Combat Vehicle 90)は、1980年代にヘグランド社とボフォース社がスウェーデン軍の新型装軌式歩兵戦闘車の要件を満たすために開発したスウェーデン製の歩兵戦闘車で、主に機械化歩兵部隊の支援・輸送・戦闘に用いられる装甲戦闘車両ファミリーだ。現在はイギリスの防衛関連企業であるBAEシステムズのスウェーデン子会社によって製造されている。

CV90は「汎用性」「機動性」「火力」のバランスに優れ、冷戦終結後の欧州における新世代歩兵戦闘車の代表格になっている。スウェーデン製ということもあり、寒冷地や森林地帯での戦闘を想定して開発されており、雪上や泥濘地での機動性が高く、北欧、中欧、東欧の国で多く採用されている。最高速度は70km/h、走行距離はオフロードで320km、整地で900km。車長、砲手、操縦手の乗員3人と7~8人の兵士を乗せることができる。

ボフォース製40mm機関砲を搭載した最初の量産型は1990年代初頭にスウェーデンに納入され、CV9040と命名され、1993年から本格的な量産が始まった。その後、30mmブッシュマスターII機関砲を搭載した輸出型のCV9030、ブッシュマスターIII 35/50機関砲を搭載したCV9035が開発され、CV9030はノルウェー、スイス、フィンランドで採用され、CV9035はオランダでCV9035NL、デンマークでCV9035DKとして採用された。その後も時間の経過とともに様々は派生型が開発され、105mmライフル砲を搭載したCV90105、120mm滑腔砲を搭載したCV90120-Tと戦車と同等の火力を持つ車両も登場するなど歩兵戦闘車の枠を超えたモデルも登場。この他にも指揮車両、偵察車両、砲兵観測車、工兵車、救急車両、対空型など17種類の派生型があり、歩兵戦闘車というよりも装甲車ファミリーと言ってよい。

バージョンアップも定期的に行われており、現在の最新バージョンはMkⅣになる。アップグレードされた電子アーキテクチャと最新鋭のX300ヘビーデューティートランスミッション、新型エンジンを搭載し、最大出力は1,000馬力に。車両総重量はMkⅢの35tから38tに増加しているが、機動力を損なうことなく積載量を3t増加している。西側諸国で初めて認定されたアクティブ保護システム(APS)を搭載した歩兵戦闘車となる。

スウェーデンとデンマークは共同で約50両のCV9040をウクライナに供与している。生存性、機動力、火力に関するCV90のウクライナ軍の評価は高く、アメリカ製のブラッドレー歩兵戦闘車よりも走破性に優れ、冬季での運用に適していると評価が高い。2024年12月には追加で40両の供与が発表され、合計90両がウクライナ軍に配備される予定だ。また、ウクライナは最大1000両のCV90の調達を計画している。

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