台湾、米国からM109A7自走砲購入承認も168両から120両に削減

US Army

アメリカは台湾に対し、総額329億ドルのM109A7自走榴弾砲とM992A3弾薬運搬車の売却案を承認しました。この兵器導入は、中国軍による上陸阻止や対岸からの火力支援に対抗するための、台湾の火力基盤強化を目的としています。

Taiwan scales back M109A7 Paladin purchase to avoid delays

台湾は2021年から2022年にかけ、旧型のM109A6(Paladin)40門の購入交渉を進め、米国は7億5000万ドルでの売却を承認していました。しかし、ウクライナ戦争の影響による生産の遅れから、M109A6の納入は2026年まで延期される見込みでした。さらに、M109A6の生産ラインが段階的に廃止されていたこともあり、台湾は陸軍の自走砲近代化を加速させるため、米陸軍で採用されている最新バージョンのM109A7への切り替えを決定します。2025年夏までに最大168両規模への拡張が計画されていましたが、今回の承認は120両に抑制されました。

納品遅延と生産逼迫が要因

今回の発注数削減と納品遅延の背景には、ウクライナ戦争に伴うM109生産ラインの逼迫があります。米国はウクライナに18両のM109A6パラディンを供与し、ノルウェーは22両のM109A3GN、イタリアは少なくとも40両のM109Lを供与しています。各国での在庫減少に加え、米陸軍も砲兵能力向上を目的にM109A7の追加発注を行っています。さらに、2025年7月にトランプ政権で承認された3億3000万ドルのウクライナへの軍事支援売却には、M109自走榴弾砲向けに1億5000万ドルが計上されており、M109の生産ラインは数年先まで逼迫している状況です。

戦争中のウクライナ軍への供給が優先される関係もあり、当初の168両すべてを納入するには7年間を超える可能性が指摘されました。予算スケジュールの関係もあり、この遅延を回避するため、発注数を120両に縮小する決定がなされました。

納入スケジュールと今後の見通し

納入は2段階に分けて行われる予定で、まず第1弾として60両が納入され、残り半分の60両は第1弾の納入と実際の受け入れ状況を確認した後に納入されます。現時点での第1弾の納入時期は不明ですが、以前承認された40両のM109A6の納入が2026年以降だったことを考慮すると、早くても2027年以降になると推測されます。

M109A7の性能

M109A7は、M109A6 Paladinから発展した155mm自走榴弾砲で、以下のような最新の改良が施されています。

  • 信頼性・整備性の向上: ブラッドレー歩兵戦闘車と部品を共通化した車体・駆動系を採用することで、信頼性と整備性が大幅に向上しました。これにより、後方支援の負担とライフサイクルコストの低減が実現されています。
  • 射撃性能の向上: 従来の油圧式から電動式に近代化された砲塔、自動ラマーの採用により、装填速度が向上し、初弾精度と弾道の一貫性が改善されました。
  • 将来性への対応: 600Vの車載電源は、将来の電子装備に十分な電力供給を可能にする設計となっています。
  • 射程と発射速度: 標準弾の射程は22kmですが、精密誘導弾「エクスカリバー」を使用すれば射程は30~40kmまで延伸可能です。発射速度は毎分4発です。

現在、台湾陸軍は250両のM109A5を保有しており、M109A7の調達により、間接砲撃能力は大幅に向上します。これは、中国による台湾侵攻の懸念が高まる中、中国軍の上陸阻止や海岸迎撃能力を強化する上で極めて重要な意味を持ちます。M109A7の導入は、台湾の防衛力近代化における重要な一歩となるでしょう。

台湾、米国からM109A7自走砲購入承認も168両から120両に削減
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