米海兵隊のAAV-7強襲水陸両用車が退役!53年の歴史に幕

USMC

9月末、米海兵隊の強襲水陸両用車(AAV-7)が半世紀にわたる運用を終え、正式に退役しました。この決定は、新型水陸両用戦闘車(ACV)への完全な移行を意味し、海兵隊の歴史において重要な転換点となります。

Marines bid farewell to the Assault Amphibious Vehicle

AAVの輝かしい歴史とその功績

9月26日、カリフォルニア州ペンドルトン海兵隊基地で行われたAAV退役式典は、AAVの最後の公式出撃要請に応える形で執り行われました。1972年に海兵隊に配備されて以来、53年間にわたり海兵隊の主力水陸両用強襲車両として活躍したAAVは、この日をもってその任務を終えました。式典では、強襲水陸両用学校の指揮官であるリン・W・ベレンセン大佐が、AAVの輝かしい功績を称賛する演説を行いました。

ベレンセン大佐は、「AAVは海兵隊に比類ない機動性と強固な装甲防御力をもたらし、敵に接近して迅速に目標を奪取することを可能にした」と述べ、その戦略的価値を強調しました。さらに、「砂漠においても、数十年前の太平洋沿岸と同様に、AAVは単なる上陸車両以上の存在であることを示した。艦艇と陸上の連絡車両、装甲戦闘車両、兵員輸送車、そして時には実戦艇としても機能し、海兵隊地上任務部隊の中核を担う戦闘車両だった」と、その多機能性と戦場での適応力を称えました。大佐はまた、AAVの運用期間中に操作および保守に携わったすべての人々、そしてAAVとともに任務に就いた海兵隊員と海軍兵の53年間の貢献に敬意を表しました。

AAV-7強襲水陸両用車

LVT

AAVは、ソロモン諸島作戦中の1942年8月に初めて戦闘に参加した装軌式上陸車両(LVT)の後継車両として開発されました。LVTは、海兵隊を船から岸へ移動させ、敵の砲撃を受けながら内陸へ進むことを可能にした最初の車両であり、タラワや朝鮮戦争の仁川上陸作戦などの激戦で決定的な役割を果たしました。また、ベトナム戦争でも海岸、川、浸水した地形を越えて海兵隊を輸送する上で不可欠な存在でした。

このLVTの進化形として、1972年に導入されたのがAAVであり、当初はLanding Vehicle, Tracked, Personnel-7(LVT-7)と名付けられました。ウォータージェット推進システムと船尾傾斜路を備えることで、船から岸への移動速度を大幅に向上させました。1980年代のサービス寿命延長プログラムでは、新しいエンジン、トランスミッション、武器ステーションが導入され、AAV-7A1へと再指定されました。その後も、運用上の要求に応えるため、何十年にもわたって追加のアップグレードが重ねられてきました。

AAVの基本性能は、地上整地での最高速度72km/h、水上航行時13km/h、行動距離は地上で483km、水上で72kmに及びます。乗員3名と最大25名の兵員を輸送する能力を持ち、武装には12.7mm重機関銃と40mm自動擲弾銃を搭載していました。

課題と新型車両への移行

しかし、その輝かしい歴史の中で、AAVはいくつかの重大な課題にも直面しました。イラクやアフガニスタンでの実戦運用では、即席仕掛け爆弾(IED)や地雷によって多数の車両が損失し、アルミ製車体の防御力の低さが浮き彫りになりました。そして、2020年7月にはカリフォルニア沖でAAVの沈没事故が発生し、兵士9名が死亡するという痛ましい事態に至り、その安全性に対する強い懸念が表明されました。

この事故を受け、2021年12月、米海兵隊はAAVの「水上運用を全面停止」すると公式に発表しました。2022年9月には一時的に再開されたものの、再び事故が発生したことで、AAVの運用に関する問題が再燃しました。同時期にAAVの後継となるACVの配備が始まっていたこともあり、2023年にはAAVの運用は演習・教育・陸上移動のみの限定使用となり、実戦や上陸作戦での使用は禁止されていました。そして今回の退役により、AAVは米海兵隊の作戦配備リストから完全に除外され、第一線の運用から外れることとなりました。今後は2020年から配備が始まった装輪式のACVが水陸両用強襲戦闘車の役割を担います。既に200台が納入され、最終的には600台以上が配備される予定です。

今後

米海兵隊では退役したAAVですが、その役割は完全に終わるわけではありません。日本の陸上自衛隊水陸機動団や韓国海兵隊をはじめとする10か国以上で、貴重な強襲水陸両用車として引き続き運用されています。海兵隊には約800両のAAVがあったとされ、一部は予備役として保管されますが、海外への売却も検討されているとされます。特に東アジアや太平洋地域の国々でAAVへの需要が高いとされており、今後も国際的な需要が見込めます。

AAVの退役は、米海兵隊の近代化と、より安全で高性能な水陸両用作戦能力への移行を象徴する出来事です。ACVが新たな時代を担う中で、AAVが築き上げた功績と教訓は、今後も海兵隊の歴史に深く刻まれ続けるでしょう。

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