
ウクライナが開発を行っていた旧式のT-55戦車を歩兵戦闘車に改修したBMP-55の画像がSNSで公開され話題になっている。BMP-55は2009年にプロトタイプが開発されて以降、開発はストップしていた。

ディフェンスブログなどの報道によれば、Telegram上でT-55戦車のシャーシをベースにした歩兵戦闘車BMP-55の画像が公開された。画像の撮影時期や場所は不明だ。ウクライナは過去、このT-55戦車をベースにした歩兵戦闘車の開発に取り組んでおり、この車両は開発元のウクライナのハリキウ装甲修理工場で撮影されたものと推測されている。
旧式のT-55戦車を再建する最初のウクライナの試みは1998年にウクライナ国防省の設計技術センターによって提案され、「BMP-55U」というプロジェクト名で始まった。BMPは、ロシア語で歩兵戦闘車を意味する「Боевая Машина Пехоты」の略であり、その名の通りT-55を歩兵戦闘車化するプロジェクトだ。
BMP-55

歩兵戦闘車化するために100mm砲を搭載した砲塔を取り外し、エンジンとトランスミッションを車体前部に移設している。これにより、後部に兵士を乗せるスペースを確保。乗員3人にプラスして、8~10名の兵士を収容できる。そして、新たに背面ランプやハッチを設けて迅速な兵員の乗降を可能にしている。
旧式のT-55とはいえ、戦車をベースにしていることもあり、装甲は強固で、BMP-55の背面装甲の厚さは40mm、14.5mmの徹甲弾を防ぎ、NATOのレベル4防護基準を満たす。車体下部は複合層で構成されており、TM-57対戦車地雷の爆発から防御でき、これはNATOレベル5基準を満たしている。前面には厚さ270 mmの装甲が装備されており、最高レベルの7番目の保護を提供。BMP-55は対戦車地雷の爆発に耐えるだけでなく、後部を除く全周はRPG-7ロケット弾の攻撃にも耐えることができる。追加装甲や爆発反応装甲(ERA)なども搭載できる。
車両の重量は武器なしで約28.5tと36tだったT-55よりは大分軽量化されているが、戦車をベースにしている事もあり、重量10t代のソ連製のBMP-1/2/3歩兵戦闘車よりは大分重い。走行能力については明かされていないが、T-55の場合は整地で最大50km/h、行動距離は460kmだった。軽量化された分、最大速度は60km/hに達すると推測されている。武装に関しては遠隔操作兵器ステーション(RWS)、30mm機関砲、7.62mm同軸機銃、対戦車ミサイル(ATGM)などが搭載可能とされる。
ソ連崩壊から数年、ウクライナは旧式のソ連製兵器の近代化を迫られていたが、資金が不足。そこで、国内に残る大量の負の遺産であるT-55戦車を改修することを思いつき、1998年にBMP-55Uのプロジェクトを発足、2000年頃から開発が始まったとされる。ウクライナは輸出も計画していた。2009年に最初のプロトタイプが開発された。しかし、ウクライナ国防省、海外顧客もBMP-55にさほど関心を示さなかったとされる。そして、資金不足もあり、その後の進捗の報告はなく、プロジェクトは途絶えました。
当時とは状況は全く異なる。ロシアと戦争中のウクライナは常に兵器不足だ。BMP-55は現代では通用しなくなったT-55戦車という資産を「現代の歩兵戦闘車」として再定義する試みで、高価な新型車両の代替として、実戦での即応性・持続性を確保する手段だ。廃棄予定の旧式戦車を再利用することでコストを大幅に削減でき、装備の不足を補い、前線への供給を迅速化できる。ただ、ウクライナにあったT-55は既に多くがスクラップにされており、1997年に154両あったT-55は2014年には20両まで減少しており、再利用できる車両は少ない。