中国製のVT-4主力戦車がアルジェリアで行われた性能テストで100%の命中率、500kmの連続走行を達成し、アルジェリア軍が現在配備するロシア製のT-90戦車よりも高い能力がある事を示した。
中国の軍需企業「内蒙古第一機械集団（FIRMACO）」の発表によれば、北アフリカのアルジェリアで同社製のVT-4戦車が評価試験を受け、長距離射撃試験で命中率100％を達成。500kmの連続走行をも達成し、その耐久性を示した。もちろん、この結果はアルジェリア軍の高官からは好意的に評価され、同国でのVT-4戦車の採用に大きく前進した。ただ、これはロシアにとっては聞き捨てならない話だ。
アルジェリア軍の主力戦車はロシア製のT-90戦車になり、2006年から調達が始まり、その数は現在572両に達するとされている。これは、インド軍に次いで二番目に多い数であり、生産元のロシア軍よりも多い数だ。この内、200両ほどがライセンス供与を受け、国内で生産されている。その他の主力戦車もT-55が270両、T-72が325両とソ連/ロシア系で占められている。T-90戦車に関してはアフリカ大陸で運用する唯一の国であり、ロシアとの蜜月関係を示している。しかし、これらロシア製主力戦車の今後が懸念されている。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2年が過ぎたが、ロシアはその間、アルジェリアからのT-90戦車に関する追加注文に応えられないでいる。
ロシア軍は3000両を超えるとされる戦車をウクライナで失った。現在、国内の戦車工場は24時間365日体制でフル稼働しているが、自軍の戦車を補充するだけで精一杯。しかも、その戦車も新規製造するのではなく、倉庫に予備役として保管されていた戦車を引っ張りだしてバージョンアップしており、新たにゼロから戦車を製造する余力はない。生産していた輸出用のT-90S戦車もロシア軍に接収されているのが確認されている。つまり、今のロシアの軍需企業にアルジェリアの注文に構っている余裕はないのだ。アルジェリアはT-90を国内生産しているが、部品を全て生産できるわけではない。おそらく高度な技術が要求されるパワーパックなどはロシアから輸入していると思われる。今後、スぺアパーツの入手が難しくなれば稼働率も低下してくる。
アルジェリアは隣接するモロッコと西サハラの領有権などを巡って長らく対立関係にあり、2021年に国交を断絶するなど火種を抱えている。同じく隣のリビアも内戦中でいつ、火種が飛び火してくるか分からない。親ロシアのアルジェリアに対し、モロッコは近年、エイブラムス戦車200両、F-16戦闘機25機など米国製の兵器を多数購入しており、昨年4月末には米国、NATOに協調する方針を示し、ウクライナを支持するとして外交政策を大幅に転換している。ライバル国が西側の強力な兵器を手に入れる中、ロシアとべったりでは今後じり貧になる。そこで目を付けたのが中国製兵器だ。ソ連製兵器をベースに開発されてきた中国製兵器はロシア規格を採用しており、今回、試験を行ったVT-4戦車もT-90、T-72戦車と同じ、125mm滑腔砲、自動装填装置を採用するなどロシア製兵器と互換性が高いとされている。
T-90に対抗して開発されたVT-4戦車
Haider Main Battle Tank development as a joint venture[JV] with NORINCO & various Pakistani defence industries led by Heavy industries Taxila (HIT).
— ENTEI (@ZEUS_PSF) March 6, 2024
Haider is basically a derivative of VT-4, a 3rd generation main battle tank currently in service with Pakistan Army, it's the most… https://t.co/dFIh1mD4Sd pic.twitter.com/G6jlWpmWRe
VT-4戦車は、中国のNORINCOが輸出用に開発した主力戦車で、パキスタンと共同開発した90-II式戦車（VT-1）、パキスタン名「アル・ハリド」の発展型で、中国人民解放軍の主力戦車99式戦車をベースにしている。インドと対立するパキスタンがインド軍の主力戦車であるT-90に対抗するよう開発されたため、T-90より性能が高いとされている。機動性、保護、火力システムは他国の主力戦車の能力に匹敵する。改良された125mm滑空砲は対戦車ミサイルなど様々な砲弾を発射でき、徹甲弾であれば2780mの距離で600mmの鋼鉄装甲を貫通する。副武装には7.62mm同軸機関銃、砲塔には遠隔兵器ステーションの12.7mm重機関銃が搭載されている。 VT-4は最新型の複合装甲と爆発反応装甲を採用しており、インド軍が現在持っているほとんどの対戦車弾を防ぐことができるとされている。また、最新型のVT-4A1にはアクティブ保護システム（APS）が採用される。これまでパキスタン、タイ、ナイジェリア軍に採用されており、実績もある。また、価格が500万ドル前後とされ、西側製戦車と比べると破格な上に、T-90戦車の価格ともそう変わらず、T-90の代替えとしてはうってつけの戦車になる。アルジェリア軍は既に多数の中国製兵器を導入している。T-90の運用国であるアルジェリアがVT-4の採用で結果を残せば、ロシア製戦車を配備する他の国でも採用が広がる可能性がある。