イスラエルの国産戦車メルカバの最初の輸出先は地中海に浮かぶヨーロッパの小国「キプロス共和国」になるかもしれません。同国はロシア製のT-80戦車を保有しており、メルカバを購入する代わりに三国間貿易によりT-80をウクライナへ供与する噂もあります。
イスラエル政府は今月6月15日に同国の主力戦車であるメルカバシリーズのMk2とMk3の輸出について2カ国と協議中であることを始めて明かしました。協議相手国は欧州を含む海外2カ国という情報だけで国名は明らかにされませんでしたが、キプロスがメルカバの購入ついてイスラエルと協議を行っているとイスラエルメディアのhaaretzが報じました。
IDF イスラエルは国防軍の主力戦車であるメルカバシリーズのMk2とMk3を欧州を含む海外2カ国に輸出する予定です。実現すればメルカバ戦車としては初の海外輸出になります。 [adcode] Merkava(メルカバ)はイ[…]
イスラエルとキプロスはメルカバ戦車の売却に関して協議を行ったと両国の情報筋がhaaretzに語りました。協議中で上がった選択肢の一つが、キプロスがイスラエルからメルカバ戦車を購入し、キプロス国家警備隊が保有するロシア製戦車T-80をウクライナに送るというものです。キプロスの情報筋は、この案はキプロスの意図であることを否定しています。キプロスにはイギリス軍が駐留するなど、イギリスと関係が深いため、イギリスが持ちかけた案かもしれません。
キプロスとは
キプロス共和国は地中海東部に位置するキプロス島の大部分を占める国でEU加盟国でもあります。もともとはイギリス領で1960年に独立、イギリス連邦の一国でもあります。そういった経緯もあり、キプロス国内にはイギリスの主権が及ぶ空軍のアクロティリ基地、陸軍のエピスコピ駐屯地があります。
しかし、キプロス軍の主力戦車はイギリス製ではなくロシア製のT-80戦車です。1996年から2011年の間に合計82両をロシアから取得しています。キプロスの国民の1割がロシア系とされ、コロナ前までキプロスはロシアにとって最大の投資相手国でもあり、関係は良好でした。しかし、今回のロシアによるウクライナ侵攻では他のEU各国と足並みを揃え、ウクライナを支援する立場を取っています。しかし、ヨーロッパの小国であるため、武器の支援はできません。また、キプロスは民族対立を背景に1974年にトルコ軍による軍事侵攻を受け、その結果、1983年にトルコ系住民が支配する「北キプロス・トルコ共和国」が北部に一方的に独立宣言したこともあり、一定の軍事力を保持する必要があります。
今回のメルカバ購入は、ウクライナ軍が使い慣れたロシア製戦車を提供したい、イギリス、EUの思惑の一部かと思われ、メルカバ購入の資金を援助する代わりにT-80戦車のウクライナへの提供を提案したものと思われます。また、キプロスとイスラエルの関係は良好であり、近年、キプロスで天然ガスで見つかり、イスラエルまでガスパイプラインを建設し、ガスを供給すなど、イスラエルにとってキプロスは安全保障上の重要なパートナーです。
Source
Israel Plans to Sell Its Merkava Tanks to Cyprus – National Security & Cyber – Haaretz.com