今年10月に行われた北朝鮮の朝鮮労働党創建75周年の軍事パレード。この軍事パレードに登場した真新しい戦車が話題になった。北朝鮮といえば数世代前の旧式の兵器しかもっていないと知られており、未だに朝鮮戦争時の兵器が配備されている。そんな中、米軍のM1エイブラムス、ロシアのT-14アルマータにも見える近代化されたフォルムの戦車が登場した。M1エイブラムスは3~3.5世代の戦車でT-14は第4世代と世界で最も最新とされる戦車だ。パレードに登場した戦車の砲塔上部にはセンサーなようなものが見える。映像ではよくわからなかったが、おそらく機銃も遠隔操作のような設計に見える。砲塔サイドには二連装の対戦車ミサイル、砲東下部にはアクティブ保護システム(APS)のような装置も見える。後方にはRPGなどロケットランチャーの攻撃を防ぐスラット装甲など、最新の第3.5世代主力戦車の装備を備えている。もちろんM1エイブラムス、T-14にはこの手の装備は付いている。
だが、エイブラムスが北朝鮮に渡るわけもなく、T-14は今後、輸出を予定しているが、まだロシア軍以外に配備されたという話は聞かない。仮に輸出されていたとしても第一号が北朝鮮のわけがない。ということは北朝鮮が開発製造した国産の戦車という事になる。北朝鮮は過去ソ連の戦車をライセンス提供受けて国産しており、戦車の製造能力はあるが、それは第2世代までの戦車だ。北朝鮮に第3世代以降の戦車を開発製造する技術力が到底あるとは思えない。
では、パレードに登場した戦車は?という話だが、あれはおそらくあれは張りぼてだと筆者は考えている。中は旧式の戦車か若しくは装甲車だと思われる。
実際、北朝鮮の主力戦車はなんのか?朝鮮人民軍の主力戦車(MBT)を紹介する。
T-34
ソ連が大戦前に開発した中戦車。大戦時におけるソ連赤軍の主力戦車として活躍。傾斜装甲に強力な85mm砲を持つ、大戦時の最強戦車の一つして知られる。朝鮮戦争ではソ連から北朝鮮に提供され、 T-34に初めて対峙した米軍は苦しめられることになる。その後、1970年代までMBTとして活躍している。70年経た今も現役とされている。
T-54/55・59式戦車
ソ連が開発した第1世代戦車。100mm砲に高い機動力は第1世代の中でも最強とされる。計10万輌が生産され、今でも多くの国で使われている。北朝鮮は1960年~1990年代にかけてソ連及び旧ソ連の国から延べ1500輌以上購入。これとは別に中国がライセンス生産した59式戦車もある。
爆風号
T-54/55を改良したバージョン。1990年代、韓国の主力戦車であったK1に対抗するために強力な125mm砲に換装された。口径だけ見れば第3世代以降の戦車に引けを取らない。T-54/55、59式戦車、爆風号と合わせると最盛期には計3000輌以上があったとされており、未だ戦車大隊の基幹を成すとされている。
T-62・天馬号
1965年に登場したソ連製の戦車。T-55の発展型で115mm砲搭載。ソ連からの購入とは別にライセンス提供を受けて自国で生産した「天馬号」がある。天馬號は近代化改修された1975年型のT-62Dがベースに1980年代に生産、レーザー測距計や爆発反応装甲が追加され、エンジン出力も上がっている。1000輌以上が購入・生産されたしており、今の朝鮮人民軍の主力を占めているとされている。
T-72・暴風号
1974年に登場したソ連の第3世代戦車。近代化改修が施され、今でもロシア軍の主力戦車の一翼を担っており、旧東側や中東などでも現役で活躍している。北朝鮮はこれを90年代に取得したとされ、1991年にソ連が崩壊した際は放棄されたT-72戦車を取得してリーバスエンジニアリングして「暴風号(M-2002)」として再利用されたしている。アフガニスタンから取得したT-80の要素も組み込まれているとされている。125mm砲に対戦ミサイル、地対空ミサイルを装備している。現在の北朝鮮軍(朝鮮人民軍)の最新戦車はT-72・暴風号とされており、精鋭部隊である近衛ソウル柳京守第105戦車師団に200~500輌が配備されているとされる。