ロシア製戦車、世界市場で地位を失い、代わりに中国製が台頭する

ロシア製戦車、世界市場で地位を失い、代わりに中国製が台頭する

2022年2月に始まったウクライナへの軍事侵攻は、ロシアの軍事力と防衛産業に重大な打撃を与え、兵器のグローバル市場においてロシア製戦車が競争力を失いつつあります。

ディフェンスブログによれば2010年から2021年の間、ロシアの戦車供給量は大幅に増加しましたが、ウクライナ侵攻以降、それは大幅に減衰しています。

ウクライナ侵攻によってロシア製戦車は現代戦における能力の不足及び、ロシア国内の戦車生産能力の乏しさを露呈し、世界市場での地位を失う結果となりました。ロシアで近年、最も成功した戦車は1992年に登場した第三世代のT-90戦車になり、インドが1000両以上を調達。その他、イラクやベトナム、エジプトなど10か国以上が採用しています。しかし、ロシアはウクライナで2000両以上の戦車を損失。その中には多数のT-90、そして、アップグレードされたT-90M戦車も含まれており、これらの戦車が対戦車ロケット弾一発で激しく爆発炎上する様子がSNSで拡散され、ロシア製戦車の評価を著しく低下させます。

そして、ウクライナに対する侵略行為と残虐行為、西側からの制裁により、ロシアの国としてのイメージが悪化、市場での信頼性を大きく損ないました。その結果、他国の競合が台頭しています。それは主に中国と韓国の戦車になり、両国の戦車は性能と価格の面でロシア製戦車に対抗しています。特に中国はこれまでロシアが顧客としてきた途上国への販売数を増やしています。

販売を増やすVT-4戦車

中国が輸出に力を入れているのがVT-4戦車(MBT-3000)と言われる輸出用主力戦車です。VT-4戦車は、中国の国営軍需企業NORINCOが輸出用に開発した主力戦車で、パキスタンと共同開発した90-II式戦車(VT-1)の発展型で、中国人民解放軍の主力戦車99式戦車をベースにしています。世代的には第3世代に該当し、その機動性、保護、火力システムは他国の主力戦車の能力に匹敵します。主砲にはロシア規格の125mm滑腔砲を採用、様々な砲弾を発射できます。徹甲弾であれば2780メートルの距離で600mmの鋼鉄装甲を貫通。 VT-4は最新型の複合装甲を採用しており、西側の複合装甲に匹敵する強度があるとされています。これに加え、爆発反応装甲も搭載しています。最高速度は70km/h、走行距離は500kmと機動力もロシア製、西側製に引けをとりません。VT-4はパキスタン軍が300両以上、タイ軍が200両、ナイジェリア軍も採用しています。パキスタン版とタイ版では独自の爆発反応装甲が搭載されています。価格は490万ドルと、450万ドルとされるT-90より若干割高ですが、性能はVT-4の方が上とされ、ロシア製が評価を落としたことで今後、引き合いが多くなる可能性があります。

また、中国は軽戦車タイプVT-5も開発しており、これは15式軽戦車をベースにした輸出用で105mmライフル砲を搭載。最高速度70km、外装タンク搭載で走行距離は最大800kmを超えます。重量は最大36トンと軽く、高原・山岳地帯に適した仕様になっています。今のところ、採用しているのはバングラディシュ軍のみです。

韓国のK2ブラックパンサーは2022年にポーランドが1000両購入、ロシアのお得意様であったエジプトが検討するなど、販売を増やす兆しはありますが、価格が1両辺り850万ドルとVT-4の倍近くになり、途上国への販売は厳しいかもしれません。しかし、ポーランドが購入したように西側の中堅国で市場を広げる可能性があります。

ロシア製戦車の失墜は同様に戦闘装甲車や回転・固定翼機など、ロシアの軍事産業全体に広がっており、ロシアの軍事産業は将来な国際的な競争力を失う可能性が指摘されています。そして、代わりに中国がロシアが失ったシェアを握るかもしれません。

Source

https://defence-blog.com/russian-tanks-losing-ground-global-arms-market/

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