T-14アルマータ戦車を擁し、世界の戦車開発をリードするロシアは同じアルマータをベースにした歩兵戦闘車を開発しています。それが「T-15アルマータ歩兵戦闘車」です。T-14と並び、ロシア陸軍の新時代を象徴する車両になり、歩兵戦闘車としては最強と言われています。
BMP歩兵戦闘車の後継
T-14戦車が戦闘を目的とした戦車なのに対し、T-15は兵士の輸送を目的と歩兵戦闘車です。3人の乗員を含む最大12人の兵士を乗せることができます。これは現在のロシア陸軍の主力歩兵戦闘車であるBMP-3と同等の能力です。そして、1980年代に開発され、古くなったBMP-3の後継車輛と目されています。
強固な防御力
T-15の車体重量は48トンです。これはBMP-3の3倍近くで、戦車並みの重量になり、歩兵戦闘車としては世界最大の重さです。つまり、それだけ装甲、防御力が優れているということです。まず、T-15は”アルマータ共通戦闘プラットフォーム”と呼ばれるT-14と同じプラットフォーム上に構成させており、戦車と同じシャーシを使用し、戦車並みに頑丈です。アルマータの特徴は乗員の保護能力で、T-15ではエンジンを車輛前面に配置、砲塔はT-14と同じ遠隔操作による無人砲塔と一番狙われ、被弾しやすい部分を無人化し、乗員を保護します。その他の部分も強固でT-14と同じく車体と砲塔の全面には複合装甲、砲塔にはアクティブ保護システムの「Afganit(アフガニト)」を装備しています。 アフガニトはアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーによって車輛に近づく飛翔体を検知、子爆弾で飛翔体を破壊または爆破、赤外線誘導を遮断する発煙弾で誘導弾をかわします。その他、車体と砲塔の主要部に爆発反応装甲Malachite(マラカイト)を装備するなど多重構造になっています。車体後部には対戦車ロケットRPGなどから保護するケージ装甲が追加されています。戦車の中でも最も優れた防御能力を持つとされるT-14と同じく、120mm砲弾やジャベリンといった対戦車ミサイルからも乗員を保護します。
高い機動力
これだけ、車体が重く、重装甲だと機動力が懸念になりますが、新しい1,500馬力のマルチ燃料ディーゼルエンジンと油圧機械式自動変速機により、整地での最大速度は65〜70km/h、550kmの装甲能力を有しており、機動力に関してはBMP-3と同等です。
高い火力
T-14と同じ防御力とはいえど、兵員輸送を目的としたT-15は戦闘を目的とするT-14ほどの攻撃力は持ちあわせていませんが、戦闘車として歩兵、軽装甲車の脅威となる武装を搭載しています。主砲はShipunov2A42 30mm機関砲になり、160発の徹甲弾と340発の榴弾を搭載できます。更に同軸に7.62mmPKT機銃、その他、副武装として、Kornet対戦車ミサイルを搭載。ミサイルは”ファイア・アンド・フォーゲット”で発射され、敵の爆発反応装甲とアクティブ保護システムを打ち負かしまます。これら複数の武器を使って、複数の標的を同時に攻撃することも可能で最大射程は10kmになります。
しかし、量産化は遅れており、現状ではまだ、戦勝パレードに数輌が登場する程度です。T-14アルマータ戦車が2022年にようやく量産化されることを踏まえるとT-15の量産化は2023年以降になると思われます。ただ、T-14同様に生産コストが高いため、海外の注文が多く入らないとコスト高で思うように生産できない可能性もあります。