ロシア軍、鉄道防衛のために装甲列車イェニセイを再配備

ロシア軍はウクライナ軍による鉄道網への破壊を防ぐために、ウクライナ占領地域内を往復する装甲列車「Yenisei(イェニセイ)」をドネツク州ポクロフスク方面に再配備した。イェニセイは2023年8月頃にドンバス地域への配備が発表されたが、その後、間もなくして破壊活動により、撤退したと報じれていた。

ロシア軍は、ウクライナ侵攻初期の2022年春頃にウクライナ南部・東部に装甲列車を投入したと報じられていましたが、破壊活動が相次いだため一度撤退していました。しかし、ウクライナ軍による鉄道網への破壊活動に対抗するため、占領地域内を往復する装甲列車「Yenisei(イェニセイ)」を再配備しました。この再配備は、ロシア国営メディアRIAノーボスチの報道によって明らかにされ、占領下のウクライナ領内における物流ルートの確保と防衛がその目的であると説明されています。

装甲列車「Yenisei(イェニセイ)」

イェニセイの主な任務は、ウクライナの前線における物資輸送に不可欠な鉄道網の保護です。具体的には、鉄道の修理、兵站部隊の護衛、そして偵察任務が挙げられます。占領地においては、鉄道警備、鉄道網の地雷除去、そして前線への兵站列車の護衛も担当し、輸送列車を先導して任務にあたっています。

2023年9月時点で、ロシア軍が少なくとも4両の装甲列車を保有していることが確認されており、イェニセイはそのうちの1両です。イェニセイの機関車と客車は、侵攻初期にウクライナのハリキウ地域でロシア軍によって盗まれた部品によって建造されたと指摘されています。この列車は2両の機関車と8両の車両で構成され、車両は装甲化されており、壁は20mm厚の鋼板で補強され、その裏には土嚢が設置されることでさらなる防御が図られています。

イェニセイには、携帯型電子戦システム「カミシュ」が搭載されています。これは20~2000MHzの周波数帯域でホワイトノイズを発生させることで、無線制御式爆発装置の起爆を阻止する能力を持っています。武装面では、23mm ZU-23-2対空砲、複数の12.7mm重機関銃砲架と迫撃砲を装備しており、さらに最大2両のBMP-2歩兵戦闘車を搭載することが可能です。これらのBMP-2は列車から降ろし、鉄道網に近い拠点への物資や兵員の迅速な輸送にも使用できます。イェニセイは、他のロシア軍の装甲列車の中でも最前線に近い場所での運用を想定しており、単なる兵站任務だけでなく、交戦目的での配備も視野に入れられているとされます。

広大な国土を持つロシア軍は、ソ連時代から燃料、弾薬、重装備、増援部隊の輸送を鉄道に強く依存しており、それはウクライナ占領地域においても同様です。ロシア軍は鉄道網の維持や修復に注力しています。ウクライナに侵攻したロシア軍は、補給線が伸び、兵站が滞ったことで苦戦を強いられました。このため、東部や南部ではウクライナの鉄道網を接収し、物資輸送に利用しています。英国防省の報告によると、ロシアはザポリージャやドネツク東部に物資供給路となる新線を建設しているとされています。

これらの補給網を絶つため、ウクライナ軍事情報局の後方部隊はここ数ヶ月、ロシアの鉄道路線への攻撃に注力しており、列車と鉄道路線を同時に何度も破壊していました。イェニセイは、こうしたウクライナ軍の攻撃から鉄道網を守るために再配備されたのです。ロシア軍には「鉄道部隊」があり、イェニセイと合わせて、バイカル、ヴォルガ、アムールの4つの装甲列車が運用されています。

ロシア軍、鉄道防衛のために装甲列車イェニセイを再配備
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