スウェーデンの国防相ポール・ジョンソンは10月30日にウクライナへの更なる軍事支援を約束、その中にはより洗練された兵器が含まれているとされ、FH-77BW L-52 アーチャー自走榴弾砲が提供される見込みだ。アーチャーは世界最強の自走砲と評価されている。
自国にSaab(サーブ)、ボフォース(現:BAE Systems ボフォース)という世界的な兵器メーカーを抱えるスウェーデンはこれまでウクライナに多くの武器を支援してきた。これらは主に銃火器やカールグスタフといった携行可能な対戦車兵器、同じく歩兵でも持ち運びできる対艦ミサイルの「RBS-17」といったものだった。アーチャーが提供されれば、スウェーデン最初の重火器の支援になる。ウクライナのクレバ外相は8月にスウェーデンにアーチャーの提供を求めており、念願だった兵器を手に入れることになる。報道によれば提供される数は12両から最大18両とされている。この他、対空システムの供与も検討されている。
FH-77BW L-52 アーチャー自走榴弾砲とは
FH-77BW L-52 アーチャーは155mm榴弾砲を搭載した自走砲で、2003年にボフォース社(現:BAE Systems ボフォース)によって開発が始まり、2013年からスウェーデン軍に配備された。車体は6輪式の装輪車で、スウェーデンの車メーカーVOLVO社製のトラックシャーシをベースにしている。砲塔部分は実績のある52口径の銃身を持つ155mm FH 77B榴弾砲を使用。火器管制システム、スペード、装填、慣性航法、および初速レーダーを含む発射システムは全てデジタル化・自動化されており、停止してから、発射まで僅か30秒しかかからない。発射後から移動までも同様で、迅速な陣地転換が可能。通常3~4人によって運用されるが、最悪1人でも操作ができるほど、システムは洗練されている。整地での最大速度は90km/hで航続距離は500kmになる。
攻撃
自動装填装置のマガジンには20発が装填でき、随伴する弾薬補給運搬車によって10分間で再装填が可能。最大射程は、標準の155mm弾で30km、ベースブリードで40km、エクスカリバーなど推進弾で最大60kmまで伸びる。複数ラウンド同時着弾 (MRSI) 射撃が可能で、30秒間のバーストで最大6発の弾丸を発射する。キャビンの上部には自衛、対空用にM2ブローニング機関銃とスモークグレネードを発射する遠隔操作兵器ステーション(RWS)が搭載されている。
高額なアーチャー
このように優れた自走砲ではあるが、現在運用しているのはスウェーデン軍のみだ。ノルウェーとクロアチアが購入予定だったが、ノルウェーは開発遅延を理由に購入をキャンセル。そして、韓国のK9を購入している。クロアチアは高額という理由でキャンセルし、ドイツのPzh2000を購入している。アーチャーの価格は450万ドルとされており、K9が280万ドル、Pzh2000が170万ドルとされるなか非常に高額だ。
スウェーデン軍は現在、アーチャーを48両配備しており、2020年に24両を追加注文しており、計72両になる予定。この内12両から最大18両をウクライナに送ることになる。発射システムは全自動化されていることもあり、乗員への訓練も最小限に済むので、導入は早いかもしれない。