駆逐戦車復活?MT-12対戦車砲を搭載したMT-LB装甲牽引車

駆逐戦車復活?MT-12対戦車砲を搭載したMT-LB装甲牽引車

ウクライナ軍はMT-LB装甲牽引車にMT-12 100mm対戦車砲を搭載した車両を戦場に投入した。対戦車砲を搭載し、水平射撃する様子はまるで絶滅した駆逐戦車に見える。

SNSに自走砲のような変わった戦闘車両が登場した。むき出しの砲塔部分から一瞬、ロシア、ウクライナ軍双方が使う”2S7ピオン203mm自走カノン砲”にも見えたが、それよりも車体は一回り小さく、しかも曲射ではなく、水平射撃を行っている。使用されているこの砲、実はソ連時代に開発された牽引式の100mm対戦車砲のMT-12になり、それを同じくソ連時代に開発されたMT-LB装甲牽引車の上部に設置して自走砲にしたカスタム車両になる。対戦車砲を搭載する自走砲は現代に蘇った駆逐戦車といってもいいだろう。

駆逐戦車とは

駆逐戦車は第二次大戦時に戦車を”駆逐”するために開発された車両になる。重装甲の戦車を駆逐するために戦車砲よりも大きな口径の主砲を搭載。その分、軽装甲、回転しない固定砲塔を採用するなど性能を犠牲にしており、戦車とは真っ向勝負するのではなく、ヒット&アウエィ、待ち伏せして戦うことを基本としている。砲塔部分に屋根が無いなど軽装甲化した分、機動力は高く、さらに車高を低くするなど、隠ぺい率を高めた。第二次大戦時、駆逐戦車は一定の成果を収めたが、戦後、戦車の性能が向上し、砲の格差が無くなり、対戦車ミサイルやRPGやジャベリンといった携行式の対戦車兵器が登場。歩兵や他の戦闘車両で十分に戦車に対抗できることから、駆逐戦車の必要性が無くなり、駆逐戦車は絶滅したと言われている。

時代遅れの対戦車砲

MT-12を牽引するMT-LB(mod ukraine)

MT-12 100mm対戦車砲は1960年代にソ連で開発され、現在も複数の国で現役で運用されている。牽引式で自走はできないため、主に拠点防御に用いられる。陣地転換の際に砲を牽引するのがMT-LB装甲牽引車の役目だ。だが、今日の戦場で牽引式の対戦車砲はあまり役に立たない。まず、射程は対戦車用のAPFSDS弾で3000mと主力戦車の主砲の射程内な上、100mという口径は現在の主力戦車の正面装甲を貫通することはできない。機動性がないので、装甲が弱い、側面を狙うと言うこともできない。対戦車と言いながら、いざ、戦車と交えれば一方的にやられる。そのため、現在はもっぱら榴弾砲のような使い方が主で、曲射の間接射撃であれば、最大射程は8kmまで伸びる。しかし、122mm/155mm榴弾砲と比べればはるかに射程は短く、120mm迫撃砲よりも短く、使いがっては非常に悪い。

牽引式を自走砲に

しかし、少しでも多くの火力を求めるウクライナ軍は兵器としての有効性を高めるためにMT-12をMT-LBで牽引するのではなく、搭載して自走砲にすることを考えた。4人のエンジニアが一か月がかりで改修を行い、MT-LBの上部にMT-12を設置。どちらも自走砲を考えた車両ではないため、砲撃の衝撃に耐えられるように慎重に改良が行われた。攻撃力は変わらないが、機動性を得たことで用途の幅は非常に広がった。また、MT-LBの本来の使いかたである牽引車としても引き続き利用が可能だ。最小3人、最大6人で運用を行う。

ウクライナ軍はMT-12を500門以上、MT-LBを2000両以上を保有しており、同型の車両を500両以上生産できることになる。戦場での有効性が示されれば、今後、量産されるかもしれない。

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