アメリカ陸軍はBGM-71 TOW(トウ)対戦車ミサイルシステム(ATGM)を少なくとも2倍の距離でターゲットに命中させることができる新しいATGM「近接戦闘ミサイルシステム(CCMS-H)」に交換することを計画しているといくつかの米メディアが報じています。
旧式化したTOW
TOWは1970年から配備が始まった発射管式(Tube‐launched)、光学追跡式(Optically‐tracked)、有線誘導式(Wire‐guided)の対戦車ミサイルシステム(ATGM)で、主に軽装甲ユニットや攻撃ヘリに搭載されています。第3世代の戦車装甲を貫く威力を誇り、冷戦時は対ソ連戦車兵器として、自衛隊を始め、西側諸国の多くの国に採用され、現在でも主要ATGMの一つです。現在のメーカーであるレイセオンが2006年に大規模生産を開始した最新世代のTOWはワイヤー(有線)の代わりにワイヤレスデータリンク(無線)を備えています。
しかし、開発から既に半世紀以上が経っており、ロシアを始めとした主要国の主力戦車aは第3.5世代、第4世代へ代わり性能は上がっています。更に、TOWの有効射程は最大3,750m、最新のTOW 2Bで4,500mです。交戦距離が延びた現代戦において、この有効射程は短く、射手を危険に晒します。そこで、米軍はTOWに後継となるATGMのCCMS-Hを計画しています。
飛距離は倍に
米陸軍の機動要件課の戦闘能力部門の責任者であるマーク・アンドリュースは4月7日の軍関係のイベントで「新しいATGMでは10キロ離れたところから敵の戦闘車両破壊できることを望んでいる」と述べ、CCMS-Hが今のTOWの倍の有効射程10kmになることを表明しました。ミサイルは今よりもはるかに速い速度で飛行し、移動中の発射が可能、撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)、遠隔操作できるようにし、射手の安全性、隠ぺい率を上げる事を計画しています。飛距離は伸びますが、近接攻撃能力は維持され最短攻撃距離は40mになります。発射機構は現在のTOWのものを流用することを考えており、これによりコスト、配備までの期間を削減します。ブラッドレー戦闘車やハンヴィーの後継車JLTV、次世代戦闘車両(NGCV)などさまざまな車両へ搭載されます。
配備は2028年から2032年の間を予定していますが、ロシアによるクリミアの併合以降、主にロシアとの潜在的な紛争に関する懸念によって計画促されており、今後の情勢にはよっては早まる可能性があります。