アメリカ陸軍は、国防総省における新たな戦略的思考の一環として、本年4月末に公表された声明において、ハンヴィー(HMMWV)及びJLTV(Joint Light Tactical Vehicle)を「余剰地上車両」と位置づけ、その調達を中止する旨を発表した。
当該決定は本年四月末に公表されたものであり、ピート・ヘグセス国防長官が主導する大規模な軍再編計画の一環として、旧式化かつ非効率と判断された装備の整理を目的とする。ジェームズ・ミンガス陸軍副参謀総長は、ハンヴィー及びJLTVの退役は漸進的に進められるものであり、既存車両は当面の間、部隊にて運用が継続される見込みであると明言した。なお、これら車両の廃棄規模については、現時点では詳細が明らかになっていない。
JLTVは当初、イラクおよびアフガニスタンにおける即席爆発装置(IED)対策として設計・開発されたが、近年の戦略的焦点が国家間競争や高強度陸上戦闘へと移行する中で、その必要性が再評価されていた。陸軍幹部は、既存の55,000台のハンヴィー、計画されていた49,000台のJLTVに加え、800台の歩兵分隊車両(ISV)を保有しており、「過剰な能力を有していることは明白である」と指摘している。JLTVは2019年に本格的な生産が開始されて以来、陸軍は約2万台を受領しており、導入が中止となれば、2万台以上がキャンセルされることになる。JLTVの1台あたりのコストは最大で60万ドルに達するとされ、予算上の大きな負担となると評価された。したがって、陸軍は既存のハンヴィーやMRAP(耐地雷・待ち伏せ防護車両)の活用を継続し、JLTVの導入数を制限する方針を採用した。
ハンヴィーは1989年より運用されており、現在運用中の55,000台のうち、約4割が装甲型、残りが非装甲型である。近年の戦闘環境の変遷及び技術の進展に伴い、より高性能かつ装甲化された車両への更新が進められてきた。今後、ハンヴィーの役割は漸次縮小され、JLTV、MRAP等の新型車両に段階的に代替される予定であったが、後継車両であるJLTVの調達が中止となった。2025会計年度予算にはハンヴィー向けに2億9,300万ドルの資金が計上されていたが、その使用が見送られることが判明している。
ハンヴィーは当初退役が進んでいたが、後継であるJLTVの調達中止は衝撃であった。2018年に配備が開始されたばかりで、生産予定数も半ばであり、生産元のAMゼネラル社は最近、陸軍技術局に対し、2024年モデルの新エンジンを搭載したJLTV A2用の新たな生産施設が稼働しており、今四半期中に初回納入を達成すると報告していた。同社は2057年までにJLTV A2を2万台、トレーラーを1万台製造予定で、フル生産に近い1日あたり15台の生産率を目指しており、動揺が広がっている。しかし、調達が完全になくなったわけではない。JLTVは米海兵隊も採用しており、当初約9,000台の調達計画であったが、評価や作戦要件の見直しにより、約12,500台に増加している。同社は国防総省の発表に対し、「契約上の要件を満たすため、HUMVEEおよびJLTV A2の組立ラインとアフターマーケット・フルフィルメント施設を通常通り稼働させる」と声明を発表した。