ウクライナの長距離精密攻撃を支える高機動ロケットランチャーM142 HIMARS。ロシアは再三、破壊したと発表していますが、実際はHIMARSは未だ一台も破壊されておらず、無敵を誇っています。
アメリカ国防総省の高官はアメリカメディアのPoliticoの取材に対し「ロシアは未だ、M142 HIMARSを一台も破壊できていない」と述べたと同メディアは11月4日に報じています。
アメリカから提供されたHIMARSは6月に初めて戦場に登場すると、最大射程90km、GPS誘導による正確無比な攻撃でロシア軍の軍事拠点、弾薬庫、補給線をことごとく破壊。東部のハリキウ、ドンバス、南部のヘルソンの戦闘ではロシア軍の前線を数十km以上押し返すことに成功、最近のウクライナ軍の大反攻を後方から支えました。戦場での有効性が示されたことで、アメリカは供与数を増やし、現在、20台ものHIMARSがウクライナ軍に供与されています。
ロシアは破壊したと言っているが
やられてばかりのロシア軍はもちろんだまって見ている訳もなく、ちまなこになってHIMARSの破壊を試みています。ロシア国防省は7月に4台のHIMARSを破壊したと発表。さらに8月にはHIMARSの弾薬庫、9月にはHIMARSの修理工場を破壊したと発表します。しかし、これらの破壊を示す証拠はなく、第三者の調査でも破壊の事実は認められていません。今のところ、HIMARSの破壊を示すような映像、写真はありません。
ウクライナ軍は長距離精密攻撃可能なHIMARSを戦略上の重要兵器として慎重に扱っています。展開地点がバレないようにすることはもちろんのこと、高機動といわれる言えんの装輪式、最高速度85km/h、走行距離480kmという機動力を活かし、攻撃後は即座に陣地転換し、ロシア軍の反撃を受ける頃には既に安全圏に退避しています。そのような運用を繰り返し、これまで一切戦力を減らすことなく、ロシア軍への攻撃を続けています。これらの活躍からHIMARSから発射できる射程300kmのATACMSミサイルが供与されれば、戦況は更に一変すると言われていますが、アメリカはこれについては一線を越える可能性があるとして供与を拒んでいます。
増産されるHIMARS
ウクライナで性能、威力が実際の戦場で示されたことで、HIMARSの評価はうなぎ上りになっており、各国から引き合いが増加しています。米陸軍は今後5年で新たに120台から最大480台を要求する予定です。2021年に11台のHIMARSを注文していた台湾はそれを29台に拡大、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアからも発注が入っています。これを受け、生産元のロッキード・マーチンは増産を計画しており、これまでの年間60台の生産から、96台に増加することを10月に開催された第3四半期の収支報告会で投資家に報告しました。ロッキード・マーティンは同じくウクライナでの活躍を受けて評価を上げ、増産が決定しているジャベリン対戦車ミサイルの製造も行っており、此度の戦争で特需の影響を受ける軍需企業の1社です。
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