オーストラリア、ウクライナにM1A1エイブラムス戦車の供与を計画

austraian army

消耗が激しい、ウクライナ軍のM1A1エイブラムス戦車。供与された31両の内、既に半数以上を失っているとされ、壊滅に近い状態だが、そこへオーストラリアが手を差し伸べようとしている。

複数のオーストラリアメディアは9月末、オーストラリアのリチャード・マーレス国防相がウクライナ政府と戦車供与の「いくつかの可能性」について話し合ったと報じた。供与が検討されているのが、退役が始まっている米国製のM1A1エイブラムス戦車だ。オーストラリア陸軍には最新のM1A2 SEPv3エイブラムス戦車の納入が始まっており、今年7月から古いM1A1エイブラムスの退役が始まっていた。

オーストラリア陸軍のM1エイブラムス戦車

オーストラリア陸軍は古いレオパルトAS1戦車の後継として2004年に3億4000万ドルで米国製のM1A1エイブラムス戦車59両を発注。2007年から運用を始めていた。その15年後の2022年にはエイブラムスを当時最新のM1A2 SEPv3エイブラムス戦車に更新する事を決定。75両を35億ドルで発注した。2024年6月には最初のバッチ27両がオーストラリア陸軍に納入された事が確認されており、9月に車両がお披露目された。それに伴い、59両のM1A1エイブラムス戦車は7月から退役が始まっている。オーストラリアはアメリカの同盟国として2001年のアフガニスタン戦争や2003年のイラク戦争に参加しているが、M1A1エイブラムスの配備は、それらが終結した後の2007年という事もあり、一度も実戦に参加していない。そのため、状態も良く、オーストラリアは予備役として保管するのではなく、余剰資産として売却を検討していた。そこに目を付けたのがウクライナであり、ウクライナは今年初めにオーストラリアに退役するエイブラムスの供与を打診していたとされている。

オーストラリアのエイブラムスは輸出版で装甲に劣化ウラン装甲を使用していない。米国からウクライナにエイブラムスを供与する際は、この劣化ウラン装甲を取り除く改修に時間が要したが、それが必要ないわけになる。さらに今年7月に退役したばかりで、装備も比較的新しく修復や改修、メンテナンスは最小限済み、直ぐにでも戦線に投入できる状態にある。

オーストラリアはNATO以外では最も熱心なウクライナ支援国であり、M113装甲兵員輸送車、ブッシュマスター装輪装甲車、M777 155mm榴弾砲といった兵器の支援から、ウクライナ兵への戦闘訓練も行っており、オーストラリアが供与に踏み切る可能性は高いとされ、最終承認元である米国政府とも協議が進めているされる。

半数を失ったウクライナ軍のM1A1エイブラムス戦車

ウクライナはアメリカから31両のM1A1エイブラムス戦車の供与を受け、今年2月に初めて戦線に投入した。全車両、ウクライナ軍最強の機械化旅団である「第47独立機械化旅団」に配備され、激戦地である東部戦線に配備。しかし、一か月で早くも5両を失った。オープンソースOryxの調べでは、これまで少なくとも16両のエイブラムスを損傷ないしは破壊、鹵獲などで失っている。31両の内5両ほどはおそらく予備戦力と後方に配備されていると思うので、前線に出たエイブラムスのほとんどを失った形で、壊滅に近い状態といってもいいかもしれない。これらの損害は主に自爆ドローンや対戦車ミサイルによるもので、湾岸戦争の戦車戦で最強を誇ったエイブラムスも現代の脅威の前ではソ連・ロシア製戦車同様、成すすべがなかった。ただ、ソ連・ロシア製戦車と違い、乗員の生存率は高く、特にエイブラムスは乗組員生存率において、最高の記録を誇っているとされ、乗員のほとんどは帰還している。つまり、車両さえあれば、直ぐにでも再出撃が可能な状況だ。ウクライナ軍もエイブラムスの防護を独自に強化、ソ連製の爆発反応装甲Kontact-1で車体・砲塔を覆い、砲塔には対ドローン用のコープゲージ装甲を追加するなど、同じ轍を踏まないよう、対策している。

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