チャレンジャー3、AJAX、ボクサー英陸軍の次世代戦闘車両

British Army

イギリス陸軍は現在、将来の脅威に対応するための軍の変革と近代化を急速に進めています。その中の一つが主要戦闘車両の近代化であり、主力戦車、装甲偵察車、装甲車の開発配備を進めています。

チャレンジャー3主力戦車

チャレンジャー3主力戦車
©RBSL

英陸軍の改革の目玉が30年ぶりの主力戦車の更新です。現在の英陸軍の主力戦車(MBT)はイギリスのヴィッカース・ディフェンス・システムズ(現:BAEシステムズ)によって開発された第三世代戦車のチャレンジャー2戦車です。1994年7月に初めて納入され、2002年までに408輌が英陸軍に納入されました。古いものは既に30年が経ち、もっとも新しい車両でも約20年を経ていますが、この間に目だった近代化改修は行われておらず、他のNATO主要国の主力戦車と比べると機能が陳腐化していました。その上、現在、NATOの主力戦車が120mm滑空砲を採用する中、チャレンジャー2の主砲は120mmライフル砲と砲弾の共通性が無い状況でした。

英国防省は重い腰を上げ、2021年5月にようやく、既存のチャレンジャー2を大規模改修する次期主力戦車チャレンジャー3の開発計画を開始します。主砲は高速弾薬を発射でき、NATO軍と互換性がある120mm滑腔砲(L/55A1)に切り替わります。同時により大きな馬力のエンジン、新しい冷却システム、サスペンションシステムを装備して、移動中の射撃の精度を向上させると共に最高速度はチャレンジャー2の56/kmから95km/hと大幅にアップ、航続距離もアップします。その他のアップグレードとして、射撃管制システムの改善では自動ターゲット検出追跡システムが追加され脅威をすばやく特定します。新しいサーマルディスプレイリモートカメラにより昼夜関係なく能力を発揮でき、夜間の戦闘能力は格段にアップ。データーリンクによりヘリや他の地上部隊とリアルタイムで戦場の情報を共有できるようになります。もともと評価の高かった防御力に関しても装甲のアップグレード、アクティブ保護システムも追加されます。現在、213輌のチャレンジャー2がありますが、改修されるのは148輌のみになり、残りは削減、若しくはウクライナに供与されるかもしれません。2027年までに最初のチャレンジャー3戦車が納入され、2030年までに完納される予定です。また、これにより、チャレンジャー戦車の運用寿命は2040年まで延長されます。

AJAX歩兵戦闘車

英陸軍の新しいエイジャックス歩兵戦闘車が振動と騒音が大きすぎてテストを中断
British Army

スカウト・スペシャルビークル (SV) として知られる新しいAJAXは、ジェネラル・ダイナミクスによって英陸軍用に開発されている歩兵戦闘車で、スペイン軍とオーストリア軍で使用されているASCOD装甲戦闘車両を発展させたものです。AJAXは、英陸軍の将来の機甲部隊の中心となるように設計されており、高度なセンサースイートを通じて、高い殺傷能力、生存性、信頼性、機動性、および全天候型インテリジェンス、監視、ターゲット取得、認識 (ISTAR) 機能を提供します。AJAXは最近の装甲車両ではスタンダードになりつつある共通プラットフォームを採用して6つの派生型が開発されています。標準である装甲偵察型には強力な40mm砲を搭載、有効射程は2.5km、発射速度は毎分180~200発。敵の歩兵戦闘車、装甲車に致命的なダメージを与えます。副武装に同軸7.62mm機関銃が搭載。最新の射撃管制システムが搭載されている他、偵察車両として音響探知機、レーザー警報システム、地域状況認識システムを搭載、高度なISR能力を有します。車両には高度なモジュラー装甲と対爆対地雷保護が装備され、小火器、砲弾の破片、地雷の爆風から乗員を保護。座席は耐爆使用で、電子対抗措置システム、NBC 保護および消火システムが装備されています。車長、砲手、運転手の3人の乗組員によって操作され、数名の偵察兵を乗せることも可能です。最大速度は70km/hです。

英陸軍は総額55億ポンドで589両の調達予定。2017年には最初の車両が就役する予定でしたが、開発が遅延。その後、先行して14輌の車輛が納入され、2021年夏の初期作戦能力の獲得へ向けて運用テストを行っていましたが振動問題が発生し、また更に遅延。完全な運用能力は、2028年から2029年にかけてを予定しています。

ボクサー装輪装甲車

ボクサー装輪装甲車
British Army

ボクサーは、8×8装輪式の全地形対応装甲車で新しい機械化歩兵車両 (MIV) となる車両です。ドイツのラインメタル社が開発製造しており、既にドイツ軍、オランダ軍など複数国で運用されている信頼ある車両です。ドライブモジュールとミッションモジュールからなる独自のモジュール設計により、多岐にわたる様々な軍事任務、役割、シナリオに合わせた機能を開発、または換装することができ、パワーパックは、現場でわずか 30 分で簡単に交換できるため、その実用性が高く評価されています。武装は遠隔兵器ステーション対応の7.62/12.7mm機関銃と軽いものから、30mm機関砲、40mmグレネードランチャー。また、自走砲仕様では105/155mmといった榴弾砲が搭載でき、ミッション要件に合わせさまざまな武装オプションが利用可能です。構造は頑丈で、全溶接された頑丈な車体は硬質鋼装甲で鍛造されています。予想される脅威レベルに応じて、モジュール式の装甲キットを追加することができます。主装甲は14.5mm徹甲弾を防ぎ、対地雷保護仕様です。熱・レーダー・音響に対する高度なステルス技術も持ち合わせています。兵員輸送車で使う場合、最大8名の兵士を運ぶことができます。最大速度は105km/h。走行距離は1050kmと高い機動力を持ち合わせています。

英陸軍は兵員輸送車、戦闘車、指揮管制車など全10バージョン、623両の調達を予定。最初の117両はドイツで生産され、残りはイギリス国内で生産されます。調達数は最大1500両に増える可能性があります。

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