中欧のクロアチアはドイツから最新のレオパルト2A8戦車50両を購入することを決定。それを受けてウクライナにM-84戦車、M-80歩兵戦闘車を含めた軍事物資を送る事を発表した。
クロアチア国防省は28日月曜、イヴァン・アヌシッチ副首相兼国防相がドイツのベルリンを訪問し、ボリス・ピストリウス国防相と会談。両国は「リング・スワップ」として知られる相互支援計画を含む意向表明書に署名した事を発表した。この合意の一環としてクロアチアはドイツからレオパルト2シリーズの最新版であるレオパルト2A8戦車50両を購入、ウクライナにM84戦車30両、M80歩兵戦闘車30両、弾薬、装備品を届けることが求められている。なお、ウクライナに供与する軍事支援物資の同等の価格がレオパルト2A8の購入価格から差し引かれる予定であり、その金額はドイツのウクライナへの財政支援で賄われる。クロアチアにとっては旧式のソ連兵器を売却し、最新の主力戦車を調達でき、ウクライナは使い慣れ、即戦力化できる兵器を受け取れる事で苦戦が続く東部での防衛力強化が期待されている。
M-84戦車
M84はソ連で1970年代に開発されたT-72戦車の改良型として旧ユーゴスラビアで開発生産されたモデル。1000馬力のV-46TKディーゼルエンジンを搭載し、最高速度は70 km/hに達し、走行距離は500kmと機動力が高い。装甲には複合装甲と空間装甲が採用され、防護力も強化されている。主砲は従来の125mm滑腔砲で、対戦車榴弾(HEAT)や徹甲安定型投射サボ弾(APFSDS)、榴弾(HE-FRAG)など、さまざまな弾薬を発射できる。SUVと呼ばれる射撃管制システム、レーザー距離計、弾道コンピューター、暗視機能も装備を搭載し、従来のT-72よりも大幅に照準精度が向上。改良されたスタビライザーは移動中でも砲を標的に向け続けることができる。副武装には7.62mm同軸機関銃と砲塔上部12.7mm対空機関銃を備えている。とはいえ、今の第三世代戦車と比較すれば能力は劣る。しかし、それでも能力的にはロシア軍のT-72の最新近代化モデルT-72B3と近く、損失が増え、古い兵器を投入しているロシア軍に対しては十分対抗可能な兵器だ。M84はクロアチア陸軍の機甲部隊の主力としても現在も運用されており、状態も良いとされる。
BVP M-80歩兵戦闘車
BVP M80は旧ユーゴスラビアで1970年代に開発された装軌式の歩兵戦闘車になる。ユーゴスラビアの独自設計で開発されたが設計思想はソ連のBMP-1歩兵戦闘車に類似しているとされ、BMPに慣れていれば、扱いは問題ないとされる。最高速度は65km/h、BMPと同様、水陸両用で水上を8km/hで移動可能。走行距離は500kmになる。3名の乗員と兵士7名が運ぶことができ、これらの能力はほぼBMP-1と一緒だ。主武装はBMP-1の73mmとは違い、20mmまたは30mm機関砲になる。この他、9M14マリュートカ対戦車ミサイルも搭載できる。
M-84戦車、M-80ともにソ連式仕様のため、未だソ連式装備が多い、ウクライナ軍への統合は問題ないとされる。どちらも30両ずつが供与される予定でこれは機械化旅団二個大隊分に相当する。早ければ年内には引き渡される予定だ。
ウクライナ軍は現在、東部戦線で戦力を上回るロシア軍に対し苦戦。ロシア軍は毎日1000人の犠牲を題しながらも侵攻、マンパワーで上回っており、米シンクタンクの戦争研究所(ISW)によれば、2022年2月の侵攻以降、10月のロシア軍の制圧面積は過去最大になった。複数の鉄道線が交わり、東部の重要な兵站拠点であるドネツク州ポクロウシクにロシア軍が迫っており、ここが陥落すれば、東部戦線は一気に瓦解する可能性がある。さらに北朝鮮兵一万人の参戦だ。マンパワーが圧倒的に足りないウクライナ軍は今週、新たに16万人の動員を発表した。