ロシアの最新戦車T-14アルマータ。2015年に初めて公開され、2020年には実戦配備されると言われながら、未だに量産化すら、実現していない。未だに実用化できていないT-14の現状についてロシア元大統領のドミトリー・メドベージェフが答えた。
ロシア国営メディアのRIAの報道によれば、ロシア元大統領でロシア連邦安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は22日木曜、ウクライナでロシアが誇る最新戦車T-14アルマータを実戦配備していない理由を語った。メドベージェフ氏によれば「アルマータは新型戦車であり、まだすべての試験を完全に通過していない」と述べ。「安価な戦車ではない」とも強調した。T-14はこれまで、主に国内の軍事パレードでしか登場していないが、同氏は、実戦配備可能な車両というよりもT-14が現状、一種の広報目的である点を部分的に認めているようで、T-14配備の欠如を説明する際に「パレードはパレード、戦争は戦争だ。これらは全く異なるものだ」と述べた。T-14アルマータは2015年5月のモスクワでの戦勝記念パレードで初公開されてから既に9年が経過しようとしているが、未だ実戦配備に至っていない。当初の予定では2020年までに2000両以上の量産化を達成する計画だったが、未だ量産化の見込みは立っていない。生産元の国営軍需企業Rostec社は毎年、量産化計画を発表しているが、毎年、遅延も発表している形だ。現状あるのは十数両のプロトタイプのみだが、演習などには参加、シリア紛争にも試験的に配備されたとの情報もある。
実は2023年4月にはウクライナにT-14が投入されたと報じられている。いよいよ、実戦投入かと思われたが、T-14が戦場で目撃されることはなく、目立った戦果の情報もなく、僅か4か月ほどでウクライナから撤退している。ロシア軍の情報筋によれば、これは実戦配備ではなく、「T-14を投入した目的は、この戦闘車両が実際の戦闘環境でどのように機能するかをテストし、観察することであった」とテスト目的であったことを述べている。T-14は直接照準を行うような戦闘環境には参加していなく、後方からの曲射による間接火力支援を行っていたと報じられている。
T-90Mがロシアの最強戦車
メドベージェフ氏はT-14のそういった状況も踏まえ、T-90M戦車が「最も優れた戦車」と称賛している。T-14が実質戦力化できていないので、そう言うのは当然であろう。同氏は「前線から戻ってきた戦闘指揮官たちは、非常に優れた武器だと装備品の注文にT-90Mの入手を求めてきている」と説明した。メドベージェフは2023年3月にも「私の意見では、T-90M戦車は現在世界最高の戦車だ。レオパルド、チャレンジャー、エイブラムス よりも優れていることは間違いない。」と称賛している。プーチンもT-14の状況を知ってか知らずか、先日、T-90Mを生産する戦車工場を訪ねた際に「世界最高の戦車」と称賛。プーチン大統領は次世代の戦車の開発についても考える必要がある旨を発言するなど、T-90の次世代の筈のT-14は既に頭に無い様子だった。
«Лучший танк в мире без всякого преувеличения»: Путину показали новые боевые машины https://t.co/QvHEYMs30u pic.twitter.com/o0smyQV00J
— RT на русском (@RT_russian) February 15, 2024
とはいえ、T-90Mは決して新しい戦車ではない。ベースとなるT-90戦車は1973年に初めて就役したT-72 戦車の派生改良型で、そのT-90は1992年に就役した。しかし、そのT-90も2000年代以降、性能が陳腐化した事で近代化改修して誕生したのが、2021年に登場したT-90M戦車になる。T-90MにはT-14の要素がいくつか取り入れられており、T-14と同じ主砲の2A82-1M125mm滑腔砲は、精度は30％向上、Kalina射撃統制システムによって照準は自動補正される。装甲にはRelikt爆発反応性装甲の最新バージョン、ソフトキル・アクティブ保護システムのShtora-1を搭載。新しい1130馬力の新しいディーゼルエンジンは整地を最高速度70kmに達する。とはいえ、T-72の派生型、これまでのロシア戦車同様、びっくり箱と揶揄される生存率は悪く、オープンサイトOryxの調べではこれまで少なくとも64両が破壊されている。全く新しい設計で生産されているT-14アルマータとの性能差は大きい。特にアルマータは無人砲塔を搭載。乗員を車体下部の装甲カプセルに納めるなど生存性が大幅に向上している。
侵攻前20両しかなかったT-90Mに対し、プーチン大統領は200両の量産を命じたが、T-90Mは在庫のT-90Aをアップグレードするもので、新規の車両は生産されていない。