イスラエルの国産戦車メルカバ。これまでイスラエル国防軍(IDF)のみでしか運用されず、国外輸出はされていませんでしたが、今回初めてMerkava(メルカバ)を海外に輸出しました。
フィリピン陸軍は7月12日、イスラエルのメルカバ Mk4戦車をベースとした架橋戦車(Armored Vehicle-Launched Bridge:AVLB) を受領しました。軍の声明によると、バタンガス港に到着した2両のメルカバ AVLBは、部隊に引き渡される前に軍事技術検査のために移送されました。今回、フィリンピン軍に引き渡されたメルカバは砲塔の無い、架橋戦車にはなりますが、メルカバファミリーがイスラエル以外の国外に輸出されるのは今回が初めてになります。
車両はイスラエルの軍需企業Elbit Systems社を通して販売されました。当初はドイツのレオパルト2ベースの架橋戦車の採用が濃厚とされていましたが、それを覆した形になります。
戦車大隊が復活したフィリピン軍
フィリピン陸軍は1958年にアメリカから提供されたM4シャーマンからなる戦車大隊を創設しましたが、運用費のコスト増から、創設から僅か3年後の1961年に戦車大隊を解体します。その後、長らく戦車部隊を保有していませんでしたが、2022年4月、フィリピン陸軍は60年ぶりに戦車大隊を復活させます。その際、採用されたのがElbit Systems社製のSabrah(サブラ) ASCOD軽戦車です。軽戦車とあるように車体重量は30~33トンと軽量、主砲は105mm砲と小口径ですが、APFSDS弾、HESH弾、HEP-T弾、HE-MP-T弾と様々な弾種が発射可能。ドラムマガジンのオートローダーには12発が事前装填でき、分間6発の発射速度を誇ります。フィリピン軍は18両のサブラ軽戦車とオーストリアのシュタイアー・ダイムラー社のPandur(パンデュール)装輪式戦闘装甲車12両を購入して、戦車大隊を復活させました。戦車部隊の機動力を活かすには架橋戦車が必要不可欠です。今回、サブラの契約との付随なのか同じElbit社からメルカバ AVLBを購入した形になります。
メルカバ戦車とは
メルカバはイスラエルが戦った四度の中東戦争での経験をもとに開発された主力戦車(MBT)です。イスラエル、中東いう荒廃した砂漠の地形に最適化、そして、イスラエルという小国が戦いを継続する上で死傷者を極力抑えることを目的に1970年代に開発が始まり、1979年からイスラエル国防軍(IDF)で運用が始まりました。当初、2.5世代戦車として開発された戦車も、その後、4度の大きな改修を経て、現在の最新のMarkIVは3.5世代相当の能力を有します。主砲は44口径120 mm 滑腔砲、副武装に12.7mm機銃1挺、7.62mm機銃2挺、60mm迫撃砲1門を対人装備が多いのも特徴です。モジュール装甲に世界でも最も評価が高いとされるアクティブ防護システム(APS)のトロフィーを装備するなど防御力が高く、また、戦車では珍しい、車体後方に扉を設けており、基本はここから乗り降りし、被弾時でも安全に退避できます。その他、軍事技術大国であるイスラエルの技術がふんだんに盛り込まれており、世界で最も優れた主力戦車の一つでもあります。今回、メルカバ AVLBはフィリピンに輸出されましたが、MBTモデルを運用するのはIDFのみです。
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