北朝鮮国営メディアの朝鮮中央通信(KCNA)は金正恩総書記が北朝鮮の新型主力戦車と言われるM2020を操縦する様子を報じた。北朝鮮は長らく、ソ連製ベースの旧式戦車を使用してきたが、このM2020は外観的には現在の最新戦車に近い性能を持つと言われている。
北朝鮮メディアは13日、朝鮮人民軍の戦車兵大連合部隊の対抗訓練競技を金正恩朝鮮労働党総書記が指導した報じ、金総書記が自ら新型戦車を操縦する様子を公開した。この新型戦車は2020年の軍事パレードで披露されたことから非公式に「M2020」と名付けられいるが、北朝鮮内での正式名称は今の所、不明だ。2020年の軍事パレードで初めて公開され、今回、軍事演習で登場したことから配備の準備が整っているとされている。写真では少なくとも7両の存在が確認でき、9両のプロトタイプが製造されていると言われている。金総書記はM2020を「世界で一番威力のある新型戦車」と称賛している。
M2020の性能は
北朝鮮とお国柄もありM2020の詳細なスペックは一切公開されておらず、外観から推測するしかない状況だ。パレードで初めてお披露目された際は外観がアメリカのM1エイブラムスに似ていたことから北朝鮮版M1エイブラムスと呼ばれた。その際はまだスッキリしたボディだったが、今回公開された画像ではいろいろ装備が追加されており、ロシアのT-14アルマータやイランのズルフィカールにも似ていると言われている。どちらも北朝鮮の友好国であり、技術支援を受けている可能性はある。
設計上は1960年代に開発されたソ連のT-62戦車の特徴を共有していると言われている。北朝鮮はソ連からT-62のライセンス供与を受けて1980年代から「天馬号」という名で生産。独自の近代化改修を行うなど1000両が生産され、朝鮮人民軍の主力戦車の一角を占めている。天馬号の主砲は115mmだが、M2020ではロシアの2A46 125mm滑腔砲が搭載されているとされる。同主砲はT-90戦車にも搭載されるなどロシア製第3世代主力の標準主砲の一つだ。装甲には複合装甲が採用されているとされ、更に写真からは爆発反応装甲、後方には対戦車ミサイルからエンジンルームを保護するたまえのスラット装甲が確認できる。
砲塔上部には近代戦車のスタンダードの一つでもある遠隔操作兵器ステーション(RWS)らしき物が確認できる。砲塔右には対戦車ミサイルらしき2連装のミサイルランチャーも見える。とにかく砲塔は米軍の最新バージョンでもあるM1A2エイブラムスSepv3並みに盛りだくさんで、アクティブ保護システム(APS)らしきモジュールと迎撃用の飛翔体を発射するランチャーらしき物(発煙弾発射機の可能性m)も確認できる。過去には対戦車ロケット弾を迎撃する動画を公開している。
とはいえ、外観から推測、または伝えられている内容の性能があるかどうかは穿った目で見る必要がある。特にAPSなどは実戦レベルで実用化されているのはイスラエルのラファエル社が開発する「Trophy」位しかなく、そうそう開発できるものではない。そもそも、朝鮮人民軍の戦車はソ連時代の車両で構成されており、先ほどの天馬号含め、古いものでは第二大戦時に使用されたT-34、最新戦車でもソ連のT-72戦車をベースにした「暴風号(M-2002)」になる。暴風号はソ連崩壊時に放棄されたソ連軍の初期の第三世代戦車T-72、そして、アフガニスタンから手に入れたT-80をリバースエンジニアリングして1990年代に開発したコピー品だ。暴風号は精鋭部隊である近衛ソウル柳京守第105戦車師団に200~500輌が配備されているとされる。
それに対し、M2020は外観から推測される性能は西側の最新戦車と同じ第3.5世代主力戦車に匹敵する。つまり、アメリカのM1A2エイブラムス、日本の10式戦車や韓国のK2ブラックパンサーに匹敵する。ASPを搭載している点では10式やK2を超えるわけだが、正直、北朝鮮が独自に3.5世代戦車を開発できる技術力があると思わえず、M2020はハリボテ戦車、ただのモックアップと言われている。今回、砲撃する写真も公開されているが、動画は一切公開されていない。ミサイル発射時は大抵動画を公開している。