ドイツからウクライナに供与されたレオパルト2A6戦車が全滅寸前

ウクライナ軍の反攻作戦の切り札とされていたドイツから供与されたレオパルト2A6戦車が全滅寸前の危機に瀕している。

経済学者でドイツ”緑の党”のセバスティアン・シェーファー氏は地元報道局シュピーゲルの取材に対し、ドイツからウクライナに供与したレオパルト2A6戦車はもうほとんど残っておらず、数両しか稼働していないと語った。実際、レオパルト2A6の損耗率は少なくとも7割に上る。

ドイツのショルツ首相はウクライナの反攻作戦を支援するため2023年1月、各国が保有するレオパルト2のウクライナへの提供を承認。ドイツ自身もレオパルト2A6戦車のウクライナへの提供を正式に表明し、レオパルト2A6戦車18両を送ることを決定した。ウクライナ軍は3月に2A6を受け取ると大規模反攻作戦が始まった2023年6月には早速、レオパルト2A6を前線に投入している。しかし、強固なロシア軍の防御陣地を前に、早速、2A6の破壊が確認される。ロシア軍は防衛ラインに大量の対戦地雷を埋設。隙間なく埋められた地雷によって、反撃部隊は脚を止められ、止められたところ榴弾砲、自爆ドローンなどによって破壊された。

ロシア・ウクライナ戦争の両軍の損失を分析するオープンサイトOryxの調べではウクライナ軍は2023年末までに、少なくとも12両の2A6を破壊ないしは損傷を被っている。つまり、現状、無傷なのは6両になるわけだが、これは映像や写真で確認できている数なので、実際の損害はこれよりも多い可能性は十分にある。また、ウクライナ軍で当初、前線に配備された2A6の数は14両という情報もある。残りの4両は予備戦力とされていたので、事実であれば初期配備の2A6の9割を失ったことになる。

ただ、幸いなのは損傷したレオパルト2A6のほとんどが回収され、修繕可能とされている点だ。これらはリトアニアのNATO基地に送られ修理を行っている。また、レオパルト2はロシア製戦車とくらべ、乗員の生存率が高いため、多くの乗員は生き残っており、修理が済めば、すぐにでも戦線に復帰できる。ただ、セバスティアン・シェーファー氏によれば、同氏がリトアニアの修理施設を訪れた際、損傷したウクライナ戦車を修復するためのスペアパーツの供給が不十分であることを発見したと述べており、修理が遅れている可能性がある。

レオパルト2A6

Bundeswher

2001年に登場したレオパルト2A6は主にドイツ軍とオランダ軍のために開発されたバージョンで今回、各国からウクライナ軍に供与されたレオパルト2シリーズの中では最も新しいモデル。A5から追加された砲塔前面部のくさび形の空間装甲ボックスにより防御力は向上。そして、A6では、これまでの120mm L/44滑腔砲から、より砲身の長い120mmL/55 滑腔砲に変更されている。これにより、最大射程は3500mから4000m以上に伸びており、その射程と精度から「スナイパー」とも称される。この他、射撃管制装置や通信コマンドシステムも改良されている。ドイツは225両あったレオパルト2A5をA6にアップグレードしており、ドイツ軍が保有する戦車の中で最も多数を占めており、供与する余力はあるが、比較的新しいモデルのレオパルト2A6の損失がこれ以上増えるとレオパルト2自体の評価にも関わるところで難しいところ。

ただ、レオパルト2A6の損害が多いのはその性能の高さから積極的に前線に投入されている表れでもあり、約80両が供与されているレオパルト2A4の損害は14両と2A6より2両多いものの供与数に比べると数は少ない。間もなくアメリカから供与されたM1A1エイブラムスが前線に配備されるとの噂もあり、レオパルト2A6の損失の穴埋めはエイブラムスが担うかもしれない。

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