ノルウェー国防省は3日、選定を進めていた次期主力戦車にドイツのレオパルト2A7戦車の採用を決めたことを発表した。コンペを争っていた韓国のK2ブラックパンサーは敗れる形になった。
ノルウェー政府は197億ノルウェー クローネ(約2500億円)かけて、54両のレオパルト2A7を新たに購入する。この契約にはオプションで18両の戦車購入も含まれているため、最終的にはもっと少ない金額で収まる可能性もある。ノルウェーは当初72両の戦車を購入する予定だったが、ウクライナ侵攻の現状を受けて、戦車の優先順位が下がり、反対意見があったため、計画された戦車の購入を基本数の車両とオプションの 18 両に分割した。2026年に最初の車両が納入される予定だ。
ドイツ製か韓国製か
ノルウェー陸軍の現在の主力戦車は2001年にドイツから購入した中古の52輌のレオパルト2A4NLということもあり、戦車の更新が迫られ、数年前から次期戦車の検討が始められた。2021年に最終候補としてドイツ製のレオパルト2A7、韓国製のK2ブラックパンサーの2つに絞られ、評価試験が進められていた。レオパルト2A7はレオパルト2A4NLのアップデート版ということもあり、更新しても乗員や整備士の訓練も最小限に済むので、レオパルト2A7が優勢というのが大方の見立てだった。
しかし、ノルウェーは2019年から韓国製のK9サンダー自走榴弾砲を運用しており、K2とK9との組み合わせはロジスティクスの点でもメリットがあった。さらに近年、K2は欧州の戦車市場を席捲。昨年にはポーランドが1000両のK2購入の契約を締結したのはヨーロッパの軍事関係者を驚かせた。ポーランドは2002年に128輌のレオパルト2A4戦車を入手。2013年にはさらに119輌のA4とA5のレオパルトを追加。そして、2020年にはレオパルト2A4の近代化バージョンであるレオパルト2PLを12輌を取得しておりドイツのお得意様であったが、K2以外にも米国製のM1A2エイブラムスを250両購入するなどドイツ戦車と決別した形だ。さらにレオパルト2の最大の保有国であったトルコはドイツとの関係悪化もあり、国産のアルタイ戦車にはドイツ製ではなく、K2と同じ韓国製のパワーパックを採用しており、ドイツ戦車離れが最近の欧州の傾向だった。そういった経緯もあり、ノルウェーもK2を選択するのでは、という報道をするメディアもあり、ドイツ、そして生産元のKWMも内心、こころ穏やかではなかったことだろう。だが、ノルウェーはレオパルト2を選択した。
ノルウェー軍のレオパルト2A4(Photo forsvaret) ノルウェー軍は古くなったレオパルト2A4NLに代わる次期主力戦車の検討をしており、最終候補としてドイツ製のレオパルト2A7、韓国製のK2ブラックパンサーの2つに絞られ[…]
ノルウェーはウクライナへ8両のレオパルト2A4の供与を表明しており、他の国からのも合わせるとレオパルト2だけで100両以上が供与される見込みだ。これだけの数が揃うこともあり、レオパルト2は前線に派遣され、ロシア軍戦車と相まみえることが推測されている。冷戦期に開発されたレオパルトシリーズは初めて東側戦車に対する性能を示すことになり、その戦果次第ではドイツ戦車がまた世界を席巻するかもしれない。またはその逆か…