ロシアのTASS通信によるとロシア国防省は、2040年以降のT-14アルマータ主力戦車に代わる次期主力戦車(MBT)として二つの車両が連結した連結戦車構想を未来の戦車のコンセプトとして策定しました。このコンセプトは8月にモスクワで開催された軍事展示会「Army-2020」のフォーラムの中で第38装甲兵器および科学研究所(NII BTVT)研究所から発表されました。
2014年に登場したT-14アルマータは2040年以降に退役を迎えるとされています。それに向けて、今の時点から次期戦車の設計は必要です。今後、戦車の主砲は大型化し、今の120~125mmから130~140mmの時代になります。ミサイルといった副武装も増加し、それに合わせて防御システムは追加され、車両は更に重くなります。これを連結車両にすることで解決します。戦車機能を二台の車両に分散化させることで一台あたりの重量を減少させ、地上への圧力を軽減します。これにより戦車機能が追加されても、機動力、作戦行動範囲が制限させることがありません。
出典 Dmitriy Fomin 2020年現在、最強の戦車はどれかといわれると、それはおそらくロシア連邦軍のT-14アルマータ(Armata)だ。各国の主力戦車の中でも最新で2014年から試作車の製造が始まり2021年から量産が開[…]
一車両目
先頭の一両目は戦闘車両の役割を持っています。T-14アルマータの設計思想を受けつぎ、堅強な前面装甲に保護された車両下部の装甲カプセルには三人の搭乗員が乗り、砲塔に人はおらず、操縦から射撃まで全てカプセル内のコントロールパネル上で行われます。主砲はT-14の125mm滑空砲から電磁砲(レールガン)に代わり、極超音速発射体を発射する新時代の武器で攻撃力を一層高めます。さらにEMP兵器の電磁パルスジェネレーター、敵を盲目にするレーザーシステム、12キロ先の標的を捕捉攻撃できるホーミングミサイルシステムが搭載されれます。防御力に関しては複数の防護システムからなる複合アクティブ防護システムが採用されます。
二車両目
二両目には3000馬力の多燃料ガスタービンエンジンを収容するように設計されます。これはT-14のエンジンの倍の出力です。これはつまり、一車両目にはエンジンは搭載されず、二車両分のパワーを後方車両で担う事を意味します。その他、レールガン用のモジュールや、様々な武器を追加できるコンパートメントとして利用したり、地上や・飛行ドローンを搭載して偵察や捜索など状況に応じて多様な用途に利用できます。
課題は多い
このような連結車両のコンセプトは今回が初めてではありません。かつて1980年代にスウェーデン軍は120mm砲搭載した連結軽戦車UDES-XX-20を開発していました。これは試作段階で終了しています。ロシアもソ連時代に履帯式輸送連結車両Vityaz DT-30(写真上)を開発しています。これは雪上や沼地、砂漠など路面状況が悪い地形において重い荷物を運ぶための車両です。
戦車として運用するには課題は多く、タイムラグの無い車両間のシームレスな連携は現状では不可能であり、コストも高く、市街地では行動が制限されます。また現状の設計では、どちらかが行動不能になった場合、セットで運用能力を喪失します。これらをクリアするには結局、目的が違う二台の戦車を作ることにもなりかねません。そもそも、無人化、小型が進む戦車でこの発想は時代に逆行しており、コンセプトのみで終わる可能性は高いです。