ロシアの国営軍需企業Rostec社は傘下の機械製造企業で、ロシア唯一の戦車メーカーであるUralvagonzavod(UVZ)にある決断を下しました。それは、戦車、自走榴弾砲以外の製造をストップすることです。これは工場が戦時体制下に入ったことを意味します。
鉄道車両も手掛けるロシア大手の機械製造企業UZV
UZV社はロシア最大の機械製造企業の一つであり 、世界最大の主力戦車メーカーでもあります。ソ連時代の1936年に創業した同社はT-54/55戦車を開発生産すると、その後もT-72、T-80、T-90とソ連/ロシア軍の歴代主力戦車を開発、最新のT-14アルマータも手掛けるなど現在のロシア軍の主力戦車のほとんどを同社が製造しています。
UZVが作っているのは戦車だけではありません。他にも鉄道車両、道路建設用車両、バス、農業用車両、工具、金属消費材といった民生品も生産しています。冷戦、チェチェン紛争も終わり、これといった紛争が無くなった2000年代以降はこれら民生品の売上が同社の3分の2を占めていました。しかし、ウクライナ侵攻で状況は一変します。
侵攻に伴う西側からの経済制裁で昨年春先頃には戦車の生産に必要な高度な電子パーツの取得が難しくなり、一時生産がストップしますが、侵攻前に海外に販売していたパーツを買い戻すなどして代替ルートを見つけ、生産を再開。更に新たに2つの戦車工場を新設します。毎月数十両のペースで新たな戦車の生産、古い戦車の改修、壊れた車両の修理も行っています。しかし、それでも需要が追い付かないのか、UZVの親会社Rostecはある決断しました。それは戦車以外の生産を止めることです。今後、UZVは鉄道やバスといった民生品の生産を行いません。その空いたリソース、経営資源を全て戦車生産に投入します。これは工場を完全な戦時体制下に置いたと言っていいでしょう。侵攻前、UZVの戦車の月次生産は30~35両だったので、その倍になる可能性があります。
ウクライナで少なくとも2000両以上の戦車を失っているロシア軍。それに対し、数百両の戦車を西側から受け取ったウクライナ軍。これに対抗するには現状の生産レートでは間に合わないとロシア政府は判断したのでしょう。Rostecは国が過半数以上の株式を保有する国営企業であり、国の意向には逆らえません。ロシアの主要産業の過半数が国営企業で占められており、今後、このような動きが広がるかもしれません。
Source
Russia’s UVZ halts all secondary output, begins tank mass production