ロシア、ウクライナのM-55S戦車と間違え、自軍のT-90M戦車を破壊する映像を公開

ロシア、ウクライナのM-55S戦車と間違え、自軍のT-90M戦車を破壊する映像を公開

ロシア軍はウクライナ軍のM-55S戦車を自爆ドローンで破壊したという映像を公開した。しかし、その後、破壊した戦車が自軍のT-90M戦車と分かり、映像は直ぐに削除された。

ロシアの軍事プロパガンダ活動家たちは8月22日、Telegram上でロシア軍が自爆ドローンでウクライナ軍の戦車を破壊する動画を公開した。映像はロシア陸軍特殊部隊「オスマン」とロシア海軍の第810独立親衛海軍歩兵旅団のものとされている。映像ではドローンが1両の戦車を空撮する中、横から自爆ドローンが戦車に突っ込み、爆発する様子が見て取れる。最後に表示される部隊記章はオスマンのものになる。使用されたのはロシア軍の自爆ドローン「Lancet」になり、成形炸薬弾頭を備え、装甲を備えた車両にも致命傷を与えることができる。そして、破壊された戦車について、ロシアはウクライナ軍のM-55S戦車と伝えていた。M-55Sはスロベニアからウクライナに供与された戦車だ。しかし、その後、動画を検証するとこれがM-55Sではないことが分かる。しかも、ウクライナ軍の戦車でもなかった。実はロシア軍のT-90M戦車だったのだ。

T-90M

ウクライナ軍、鹵獲したロシアの最新鋭戦車T-90Mを早くも戦線に投入へ

T-90M戦車といえば、ロシア軍が前線で運用する戦車しては最強と言われる戦車。1992年に配備が始まったT-90戦車に、ロシア軍の最新鋭戦車T-14アルマータと同じ砲塔、装甲、射撃管制システムを搭載している。ウクライナ侵攻前には20両しかなった車両で、当初、最強戦車投入と騒がれるも、ことごとく破壊、鹵獲が報じられ、初期の車両は全滅したが、その後、プーチンが200両の量産を指示、これまで数十両が新たにウクライナに投入されている。

M-55S

スロバキアがウクライナに28両のM-55S(T-55)戦車を提供することを決定

M-55S戦車はソ連製の第一世代戦車T-55を近代化したスロベニア軍の戦車で、延べ28両がウクライナに供与されている。主砲はT-55のソ連製100mmライフル砲から、イギリス製のL7/M68 105mmライフル砲に置き換えられ、防護面では、車体と砲塔に爆発反応装甲 (ERA) が追加、射撃管制装置は第三世代戦車と同等の物に近代化改修されている。同戦車は全て第47独立機械化旅団に配備されている。今年7月にはロシア軍の自爆ドローンによって1両が破壊されたことが確認されている。

T-90とT-55を見間違う

ロシア軍、ウクライナ軍は双方ともに同じソ連系の戦車を使用しており、外観だけでは判断できないため誤爆、誤射は頻繁に起きている。しかし、近代化改修したとはいえT-55と言っていいM-55SとT-90Mを見間違えするとはお粗末と言える。T-55と比べてもT-90Mの方が一回り大きく、シルエットや装備も異なる。しかも、混乱する地上戦ではなく、しっかり確認する時間があるドローンでだ。自爆ドローンを運用するチームが自軍のT-90Mのシルエットを判別できなかったというのは非常にお粗末だ。しかも素人部隊ではなく、エリートの特殊部隊と海軍歩兵だ。

ロシア軍にとっては幸いにも今回、誤爆されたT-90Mは放棄されたもので、乗員はいなかったようだ。そのためか、他の見立てとして、放棄したT-90Mを破壊するためにわざと攻撃したという推察もある。であれば、このように動画が公開されるのも不自然であり、そもそも、その役目は放棄した戦車兵だ。

しかし、どちらにせよ、戦車兵もドローンオペレーターもお粗末だった。

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