ロシアの映画製作会社モスフィルム、軍に撮影用の戦車50両を寄贈

ロシアの映画製作会社が撮影用に保有していた戦車や装甲車など50両の軍用車をロシア軍に寄贈していた事が分かった。これらは不足するロシア軍の戦力を補填するために使用されているとされる。

ロシアの独立系メディアであるテレグラムニュースチャンネル「Astra」は13日水曜、ロシアの映画製作会社モスフィルムがロシア軍に戦車や装甲車といった戦車50両を引き渡したと報じた。この発表は、クレムリンでのプーチン大統領とモスフィルムのカレン・シャフナザロフ総監督の会談中に発表された。シャフナザロフ氏は寄贈品について具体的な詳細を述べ、「ロシア国防省に連絡し、北部軍管区のニーズのための600万~800万ドルの慈善援助として、2023年にモスフィルムが保有していたT-55戦車28両、PT-76水陸両用軽戦車8両、BMP歩兵戦闘車6両、大型トラクター8台を譲渡し、軍に引き取られた」と明らかにした。これについてプーチン大統領は「我々はモスフィルムを誇りに思う」と答えている。

これらの車両はもともとロシア軍が保有していたもので、退役したものをモスフィルムが購入。モスクワ近郊のクラスノズナメンスク市にあるモスフィルムのスタジオに保管され、これまでロシアで製作される映画やテレビシリーズの小道具、観光客向けのアトラクションとして使用されており、車両の状態は良好だった。

モスフィルムとは

映画製作会社モスフィルムはロシアを代表する映画スタジオであり、国内最高の才能と制作チームを結集しているとされる。1924年にソ連で同国の映画独占企業の製作部門として設立され、ヨーロッパ最古・最大の映画スタジオになる。1925年には代表作の一つ『戦艦ポチョムキン』を公開。1968年には『戦争と平和』、1975年には黒澤明監督の下、製作された日ソ合作映画『デルス・ウザーラ』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。ソ連崩壊後も3000本以上の映画を製作。現在、年間100本のコンテンツを制作できる能力があると謡っている。近年の戦争映画だと2012年に第二次世界大戦の東部戦線を描いた『ホワイトタイガー』を公開。ドイツのティーガーI戦車は撮影用に新たに製作したものだったが、T-34など登場するソ連戦車は本物が使用された。モスフィルムは170両以上の戦車を保有しているとされているので、今回、提供した車両は一部にすぎない。

PT-76水陸両用軽戦車

今回、モスフィルムからロシア軍に寄贈された兵器として、注目すべきはPT-76だ。PT-76は1951年に量産が始まった水陸両用軽戦車で、1969年までに約7000両が生産。一番新しいものでも半世紀以上経つが、現在も退役することなく改良を重ねながらロシア軍で使用されている。水陸両用というように水上も移動可能で整地を速度44km/h、水上を10km/hで移動する。ただ、設計が古い事もあり、燃費は悪く、行動距離は260kmしかない。外部タンクを追加すれば360kmまで伸びる。車体の信頼性は高く、PT-76のシャーシは同時期に開発されたBTR-50装甲兵員輸送車やシルカ対空自走砲など、複数の軍用車両に流用された。軽戦車というように主砲には76.2mm戦車砲D-56Tを搭載。しかし、戦車砲としては開発時から既に口径、威力ともに陳腐化。速射性も悪く、兵器としては中途半端な位置づけになる。

そして、PT-76は致命的に装甲が弱い。水陸両用、重量14トンと軽量化を実現した代償に装甲は薄いところで6mm、一番厚い部分で15mmしかない。それもあってか、PT-76は未だ、ウクライナでの目撃報告がない。前線に無いだけなのか、投入していないのか不明だ。ただ、それよりも貧弱な非装甲の車両をロシア軍は前線に投入しているのが確認されており、PT‐76を温存する理由はなく、装甲以外の別の問題があるのか。

それに対し、T-55戦車は2023年3月から投入が始まってから、戦場では何度か目撃されている。BMP歩兵戦闘車も戦争序盤から主力として登場している。

ロシアの映画製作会社モスフィルム、軍に撮影用の戦車50両を寄贈
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG