ロシア軍が実戦配備する主力戦車としては最新鋭のT-90M戦車の破壊が初めて確認されました。T-90Mは20両しかない貴重な戦車です。
ロシア軍はウクライナ侵攻において、これまで1000両以上の戦車を消失しているとされ、これは即応戦力の半数に近い数字です。その多くはT-72系、T-80系になりますが、ロシア軍主力戦車の中でも比較的新しいT-90Aが少なくとも19両含まれています。そして、このトロフィーの中に新たにT-90Mが加わりました。ロシアの最新戦車T-14アルマータの量産が進んでいない現在、T-90Mはロシア陸軍の持つ戦車では最新鋭で最強の戦車になります。
SNSの投稿には破壊されたT-90Mの残骸が確認できます。T-90Mは東部ハリキウ州への配備が確認されたのはつい、先日になり、僅か数日で破壊されたことになります。
T-90Mとは
T-90Mはロシアの最新鋭戦車であるT-14アルマータの量産までの穴埋めとして性能が陳腐化していたT-90を近代化改修した戦車になります。T-90はT-72をベースに改良を加えた第三世代戦車ですが、ソ連崩壊後の1992年に採用されたこともあり、混乱と財政難で本格的な量産が始まったのは2000年代以降。その頃には性能が陳腐化。何度か改修を行い、更に2014年に登場したT-14の量産が思うように進まないこともあり、2020年4月には最新のT-90Mプラルィヴを配備します。T-90MにはT-14と同じ主砲の2A82-1M125mm滑腔砲が搭載され、精度は30%向上、Kalina射撃統制システムによって照準は自動補正されます。砲弾数は43発で22発が自動装填装置によって装填。砲弾には3つの専用弾が用意され、劣化ウラン弾の「ヴァクーム1」、榴弾の「テリニク」は遠隔操作で起爆させることができ、誘導ミサイル弾の「スプリンテル」は飛翔中に軌道を修正できます。装甲にはRelikt爆発反応性装甲の最新バージョンを搭載、ソフトキル・アクティブ保護システムのShtora-1は敵の赤外線照準をうけると赤外線誘導を妨害、煙弾を撒き対戦車ミサイルを妨害します。新しい1130馬力の新しいディーゼルエンジンは整地を最高速度70kmに達し、これらの能力は第3世代戦車としては屈指の能力とされていました。
ロシア陸軍は運用中のT-90のほとんどをT-90Mにバージョンアップする予定でいますが、現在、完成したT-90Mは僅か20両しかないとされています。さらにウクライナ侵攻に伴い西側からの経済制裁で最新のパーツを必要とするT-14とT-90の生産ラインはストップしているとされています。
カールグスタフ無反動砲で撃破
ウクライナ国防省の発表によればT-90Mはスウェーデンから提供されたカールグスタフ無反動砲で撃破されました。無誘導のロケット砲ですが、射程は対戦車弾で700mでHEAT 751 対戦車榴弾の装甲貫徹力(RHA)は700mmになります。
ロシア軍にとってはこれまでの戦車の消失よりもダメージは大きいと思われます。残骸は分析のため、NATOに送られる可能性があります。