オランダ軍は戦車全廃を撤回し、レオパルト2A8戦車50両からなる戦車大隊を新設する

NATO

オランダは新しい防衛計画の中で、50両のレオパルト2A8戦車で構成される新しい戦車大隊を設立する計画を発表した。オランダ陸軍は2011年に全ての戦車を廃止しており、この計画はオランダの防衛戦略の転換を表している。

オランダメディアのNRCは、オランダ政府が今後数年間の防衛計画を示す防衛白書の中で陸軍に新しい戦車大隊を創設する計画である事を国防省の発表を引用する形で報じた。大隊はドイツ製のレオパルト2A8戦車52両からなり、内6両がオプション。これらの取得費用については明かされていないが、戦車の購入費、維持費、大隊隊員350人の人件費を含めて年間2億6000万~3億1500万ユーロの予算を予定している。

冷戦時、西ドイツに隣接するオランダ陸軍にはかつて約1000両の戦車があった。1979年には445両のレオパルト2戦車を発注、その後、330両が1993年に2A5にアップグレードされ、その後、更に188両が2A6にアップグレードされている。しかし、冷戦が終了すると戦車は余剰になる。保有していた戦車のほとんどをオーストリア、カナダ、ノルウェー、ポルトガルなどに売却した。2000年代はテロ組織や武装組織といった非対称戦争が主で、オランダも国際治安支援部隊としてアフガニスタンに駐留していたが、戦車の出番はほとんどなかった。防衛費の予算削減、2008年のリーマンショックによる景気低迷に伴う歳出削減もあり、オランダ国防省は維持費のかかる戦車を2011年に廃止した。しかし、火力と防護力、突破力を兼ね備えた戦車が一両もないのは、地上作戦を行う上では心もとなく、2015年にドイツからレオパルド2A6戦車18両をリースで取得。ただ、これらの所有権はあくまでドイツ連邦軍にあり、オランダ軍との混成部隊である第414戦車大隊に所属したまま、ドイツのNATO訓練場に駐留しており、軍事作戦で必要な際は同大隊がオランダ陸軍に加わる相互協定が結ばれ、海外に派遣された。なので、2011年から完全にオランダ陸軍は戦車部隊の運用能力を失っており、今回、13年ぶりに戦車大隊を復活させる決定を下した。

この決定はもちろん、ロシア・ウクライナ戦争の影響によるものだ。かつて、戦車不要論が出るなど、現代戦では戦車は不要といわれた。実際、アメリカ海兵隊も戦車大隊を廃止している。ロシア・ウクライナ戦争でも開戦当初は守備に回るウクライナ軍が歩兵の携行式対戦車兵器でロシア戦車をことごとく破壊し、侵攻を止め、首都防衛に成功、ロシア軍を撤退に追い込んだ。しかし、その後、ウクライナ軍が反転攻勢に出ると火力と装甲、突破力がある戦車の重要性が再認識され、ウクライナは西側各国に戦車の供与を要請した。オランダはリースで取得したレオパルト2A6をウクライナに供与すると表明。しかし、所有権はドイツにあるため、オランダにその権限はない。ドイツはウクライナに21両の2A6を供与しているが、その中にオランダのリース分の車両が含まれていたのかは不明だ。またオランダは退役していたレオパルト1A5戦車100両をウクライナに供与するための改修プロジェクトにデンマークとドイツと共に参加している。今年8月にはデンマークと共同で、中古のレオパルド2A6戦車14両を1億6500万ユーロで購入し、ウクライナに寄贈すると発表している。

世界情勢の変化、戦車の重要性を再認識させられたことで、自軍でも再度、戦車部隊を持つ決断を下す。オランダは40年に渡るレオパルト2戦車の運用経験を持っており、戦車を廃止してから13年しか経っておらず、戦車兵だった隊員も軍には残っている。若手は居ないので教育は必要だが、復活に問題はないだろう。

レオパルト2はA5以降、既存車両をバージョンアップする形で進められたが、最新版のレオパルト2A8は完全新規で生産される予定で、既にドイツ、ノルウェー、チェコが採用を決定している。昨年、ドイツはオランダに量産化によるコスト削減及び、NATO欧州内の兵器の共通化を睨み、オランダにレオパルト2A8の採用を働きかけていた。オランダの参加で100両以上の生産が確定した。

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