第一次世界大戦に登場して以降、戦車は地上戦には不可欠であり、戦車の性能、戦力が勝敗を分けてきた。戦車は地上侵攻の要であり、陸軍の象徴でもある。近年は航空戦力やドローン、対戦車兵器が数多く登場、市街地戦が多くなり戦車の重要度は薄れ、削減されつつあるが、それでもなお、世界には約73,000輌の戦車が存在する。では、最も数多くの戦車を保有しているのはどこの国の軍のだろう。国際戦略研究所(ISS)が調査、公表しているデータを基に紹介する。
1位 ロシア 12,950
軍事力ランキングで米国に次ぐ2位だが、陸軍に関しては最強という呼び声もあるロシア。その戦車の保有数は断トツの13,000輌だ。第二次大戦時のT-34など最強の戦車を開発し続け、現在もT-14アルマータで世界の戦車開発をリードしている。T-34は戦場からは退いているが式典用に数十台保有している。戦車大隊の基幹を成し、もっとも数多く保有しているのがT-72とT-80になる。それぞれ、1972年、1980年に運用が開始された古いモデルではあるが1,000輌ほどが近代化されている。その他にもT-90などがある。T-14はまだ量産化にい当たっていない。保有数は多いものの、実際に稼働しているのは3,000輌ほどとされ、T-54、T-55といった古い戦車を含めた残りの1万輌は予備役として兵器庫に眠っている。
写真出典 ロシア連邦軍 あるユーザーがロシア連邦軍に関するWeb上の公開資料の情報をもとに現在(2020年)のロシア連邦軍の主力戦車の台数を明らかにしました。 戦車の数は倍増 この投稿をInstagra[…]
2位 アメリカ 6,333
アメリカの主力戦車といえばM1エイブラムス。1980年に採用された第三世代主力戦車だが、M1A1、M1A2と都度、近代化アップグレードを重ねており、3.5世代戦車の能力を保持している。そのため数はロシアの半分といえど個々の能力は高く、実働ベースで考えれば戦力にそん色は無く実戦での戦果だけで見れば最強の戦車になる。1992年に最後のM1エイブラムス納品して以降、新規の生産は行われておらず、以降は近代化改修のみになる。近年は米海兵隊が戦車大隊を廃止するなど、削減傾向にある。陸軍は今後、軽戦車の新規採用を検討している。
3位 中国 5,800
軍事大国となった中国。経済力を背景に戦車の数も増やしている。以前はソ連製のT-54のライセンス生産やT-62のコピー品を製造していたが、近年はそこで得た知見をもとに独自開発、隣国パキスタンと共同開発などを行っている。最も多く配備しているのが第二世代の96式戦車とされその数は約1500輌とされる。もっとも新しいのが第三世代の99式戦車になり、最新の3.5世代の99式A戦車と合わせ約1000輌が生産されており、急速な近代化を図っている。15式軽戦車はiインドとの国境問題を抱えるチベットの高山地帯や、陸戦隊(中国版海兵隊)の上陸用として配備されるなど近年、数を増やしている。
4位 インド 4,665
陸続きの隣国、中国、パキスタンと火種を抱えるインド。両国が軍備を増強させる中、インドも近年軍事力を飛躍的に増加させている。インドの兵器は陸海空ともにソ連・ロシア製を愛用しており、主力戦車はT-55、T-72、T-90が大半を占めている。T-90Sにおいては国内でライセンス生産を行っている。1970年代から国産戦車の開発に取り込むも開発は難航。2004年にようやく最初の国産戦車Arjun(アージュン)の運用が開始される。アージュンは初期のMk-I、改良型のMk-Ⅱと合わせまだ数百輌しか生産されていない。
5位 エジプト 3,620
アフリカ大陸最大の軍事大国であり、北に過去4度の戦争を行ったイスラエル、スエズ危機を経験した世界最大の運河を有し、西には過去に戦ったリビア、南に政情不安なスーダンを抱えるエジプトは数多くの戦車を保有している。戦車はアメリカ製とソ連製をメインに据える珍しい運用を行っている。その中で大変占めるのがM1エイブラムスとM60パットンになる。M1エイブラムスは1984年にアメリカから国内での生産許可を得て延べ1300輌を生産、1700輌のM60パットンをアメリカから購入している。
6~10位
6位 北朝鮮 3,500
今年10月に行われた北朝鮮の朝鮮労働党創建75周年の軍事パレード。この軍事パレードに登場した真新しい戦車が話題になった。北朝鮮といえば数世代前の旧式の兵器しかもっていないと知られており、未だに朝鮮戦争時の兵器が配備されている。そん[…]
7位 韓国 2,914
8位 パキスタン 2,766
9位 トルコ 2,379
10位 ウクライナ 2,076
ちなみに日本は667輌で19位になる。
しかし、勘違いしないで欲しいのは上の数の戦車が実際の戦力ではないということ。イギリスの軍事コンサルタント兼コメンテーターであるニコラス・ドラモンド氏によると現在、73,000輌の戦車のうち戦場及び軍で稼働しているのは24,000輌しかない。少なくとも20,000輌は保管された状態になる。いざ、有事になっても直ぐに稼働することはできない。また、日本の陸上自衛隊の戦車は数は少なくとも、400輌以上が90式戦車、10式戦車と比較的新しい戦車になる。方や北朝鮮の戦車の大半はT-54/55と旧式の第1世代戦車がほとんどであり、数の差がそのまま戦力差というわけではない。