ウクライナ国防省は2月10日、ロシア軍戦車の破壊数が一万両に達した事を発表した。戦争が始まって、まもなく4年目に突入するにあたり、大きな節目の数に達した。
ウクライナ国防省は2月10日、公式X上でロシア軍の戦車の破壊数が一万両に達した事を発表。「新たなマイルストーンを達成しました。本格的な侵攻が始まって以来、ロシアの戦車1万両が破壊された。ウクライナ陸軍は引き続き強く立ち、敵を破壊します!」と陸軍の戦果を称えた。ロシア軍はウクライナ侵攻前3,000両ほどの戦車を配備。この他、退役し、保管されていた備蓄装備が12,000両程あったと言われているので、3分の2を失った事になる。ウクライナ国防省の発表によれば、2022年に3031両、2023年に2952両、2024年に3689両と毎年3000両ほどの戦車の損害をロシア軍は出している。2024年、ロシア軍は制圧地域を拡大したが、その分、多くの損失を出した。2025年に入っても1月だけで240両ほどの損失が報告されており、損失ペースは変わっていない。現状、ロシア軍に稼働できる状態で残っている戦車は2000両、年間の生産量は300両といわれているので、このペースだと年内にはロシア軍の戦車が枯渇する可能性がある。
ただ、ウクライナ国防省の数字を鵜呑みにできない部分もある。ロシア・ウクライナ両軍の損失を独自検証しているオープンソースの「Oryx」の調べでは、ロシア軍のこれまでの損失は3,744両なので、だいぶ乖離がある。ただ、OryxはSNSなどで確認できた画像や映像をベースに視覚的に確認できた損失しか計上していない。実際には公開されていない戦果、写真や映像として記録されていないもの。兵士の口頭による報告もあるだろうから、Oryxの検証は”少なくとも”という最低限の数字になる。他の第三者機関もOryxと近しい数字を挙げているが戦果はもっと多いだろう。ただ、”少なくとも”という数字でもロシア軍が近代戦争では稀にみる損害を出している事に違いはない。
戦争では味方や国民の士気を上げるため、戦果を誇大に報告しがちであり、ウクライナの発表も誇大な気はしなくもないが、実はそこまで、盛っていない可能性もある。というのも、ウクライナ国防省はロシア軍の人的損失を85万人と報告しているが、米国防総省と英国防省による最近の評価では、ロシア軍の死傷者数をそれぞれ70万人と83万7000人と、ウクライナの発表と近い数を示している。両国ともウクライナを支援し、ウクライナからの報告を元に分析しているとは思うが、ある程度、数字の信ぴょう性がある事が伺える。
ロシア・ウクライナ両国とも多大な損害を出しながら、もうすぐ、戦争は4年目に突入する。プーチン大統領は辞め時を逸したと言われていたが、トランプ米大統領は12日、SNSでロシアのプーチン大統領と停戦にむけた電話協議を行ったと明らかにした。ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、直ちに戦争終結に向けた交渉を始めることで合意。サウジアラビアで会談する可能性を示唆し、「そう遠くない将来に停戦が実現するだろう」と述べた。14日には早速、ドイツ・ミュンヘンで停戦に向けた関係各国との協議が行われる。2022年にも何度か停戦交渉が行われたが、実現しなかった。