アメリカからウクライナに供与されたM1A1 SAエイブラムス戦車が初めてウクライナの最前線に投入されたことが分かった。しかも、そこは、現在、最も過酷な戦場とされる場所だ。
ウクライナの軍事メディアMiritarnyiの報道によると、ウクライナ軍第47機械化旅団所属のM1A1 SAエイブラムス戦車がウクライナ東部ドネツクの最大の激戦地であるアヴディウカの戦線に出現したと伝えられている。ここは2014年に親ロシア派武装組織が実効支配し、一方的に独立を宣言したドネツク人民共和国との間の紛争が続くエリアであり、ロシアによる侵攻後も激しい攻防が続いているエリア。目に見える戦果を求めるロシアはドネツク州を完全支配するために、ここ数か月に渡ってアヴディウカの完全制圧を試み猛攻を仕掛けている。2014年から戦闘が続いていることもあり、ウクライナ軍はここを完全に要塞化、防護陣地を構築しており、ロシア軍の猛攻に耐えている。しかし、ロシア側は損害を顧みない物量戦をしかけており、ウクライナ側は劣勢とも伝えられている。そこへ、今回、待望のM1A1 SAエイブラムスが投入されたことになる。
アメリカから31両が供与されているM1A1エイブラムスは現在、米陸軍が配備するM1A2より一世代前のモデルになるが、SA(Situational Awareness:状況認識型)と呼ばれる改良型で車長用の照準器と暗視装置を装備している。劣化ウラン装甲などは省かれているものの、ウクライナ軍のM1A1には更にそれにエイブラムス用に開発された「M-19 Abrams Reactive Armor Tile (ARAT)」と呼ばれる爆発反応装甲を追加し、防護力がアップしている。また、アメリカは昨年9月に明らかにした軍事支援でエイブラムスで使用する劣化ウラン弾をリスト化しており、ウクライナ軍のエイブラムスはおそらく劣化ウラン弾を搭載。1991年の湾岸戦争でイラク軍のT-72戦車に無双した米軍のエイブラムス戦車と遜色はない。31両しか提供されていないこともあり、おそらく全両が第47機械化旅団に配備され、アヴディウカ戦線に投入するものと思われる。