ウクライナ軍がロシア軍との戦闘で最初のチャレンジャー2主力戦車を損失したことが確認された。同戦車はイギリスから14両がウクライナに供与されていた。
Destroyed Ukrainian Challenger 2 outside of Robotyne, most likely from the 82nd Air Assault Brigade. pic.twitter.com/KInjnmfs4F
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) September 5, 2023
9月4日月曜、SNS上に道端で炎上する戦車の映像が投稿された。この戦車はウクライナ軍第82独立空中強襲旅団のチャレンジャー2戦車とされている。燃え盛る煙で戦車の形状を判断することは難しいが、砲塔の形状から、それがT-72、T-80といったウクライナ軍の主力のソ連系戦車、そして、ドイツ、ポーランドなどから提供されているドイツ製のレオパルト2ではないのは何となく判別がつく。砲塔前面には避弾経始の傾斜装甲が見られ、これがイギリスからウクライナに提供されたチャレンジャー2戦車であることが分かる。
映像を見る限りは車内からも煙が出ており、燃料タンクがやられたとされている。チャレンジャー2は4人乗りだが、乗員は全員脱出したとの情報だ。一体どのような攻撃を受けてこうなったのだろう。チャレンジャー2戦車の売りは装甲だ。セラミック、鋼、および衝撃吸収化合物で作られた複合装甲の強度は均質圧延鋼装甲(RHA)の二倍の質量効率を持つとされている。2003年のイラク戦争では1両のチャレンジャー2が近距離から計14発のRPG対戦車ロケットランチャーと対戦車ミサイルMILANの攻撃を受けるも乗員は無事で、大破することなく、その後修理され、6時間後には戦線に復帰している。2006年にはRPG-29のタンデム弾によって正面装甲を貫通されながらも、2.4kmを走行して基地まで帰還。T-55の105mm砲では表面が焦げ付くほどで損傷を与える事ができないことも実証されている。チャレンジャー2の前には後部が破損し動けなくなったT-72orT-80と思われる戦車が止まっている。状況からしてドイツのレオパルト2が散々やられた地雷による被害の可能性が高い。ただ、地雷だけではこうならないので、動けなくなったところにロシアの自爆ドローンLancetにとどめをさされたとされる。燃料タンクの炎上はおそらくドローンによるものだろう。
そこで、心配なのがチャレンジャー2の回収だ。イギリスは同戦車をウクライナに供与したものの、破壊または動けなくなり、戦場に遺棄されることでロシアに戦車が渡ることを危惧していた。そうなれば、装甲技術など軍事機密を分析されてしまうからだ。そのため、前線への投入は慎重であった。6月に反転攻勢が始まった際、レオパルト2の投入や損害が多数報告される中、チャレンジャー2の情報が少なかったのはそのためだ。同戦車は最強部隊第82独立空中強襲旅団に配備、同旅団は予備部隊として、ここぞの場面で投入させるため、反転攻勢が始まってからもしばらく待機させられていた。
チャレンジャー2が破壊された場所は激戦地であるウクライナ南部ザポリージャ州ロボティネ郊外になる。ここはロシアが占領する南部の要衝メルトポリへ向かう途上で、ロシア軍が二重、三重にも防衛線を敷いている最前線地帯だ。しかし、ウクライナ軍は数日前にロボティネ周辺の第一防衛線を突破、分断することに成功し、同地域一体を占領することに成功している。つまり、チャレンジャー2は今のところ、ロシア軍に回収される心配はないということだ。修理は難しいとしても、イギリス側としては後継車両チャレンジャー3の開発を進めている中で、実戦で得た貴重な損害データを今後の開発に活かしたいところだろう。
今回、1両が破壊されたが、まだ14分の1であり、チャレンジャー2が配備された第82空中強襲旅団は引き続き前進している。
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