ウクライナ軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍最強の主力戦車であるT-90Mを接近戦で撃破する動画が拡散され、驚きを与えている。
Bradley IFV of the 47th Brigade of Ukraine engages in a battle with Russian T-90M, Avdiivka front. (Bradley is in foreground while T-90M is in the middle of the village). At the end of the video it’s visible that tank most likely received significant damage as the crew cannot… pic.twitter.com/uutTexfXf5
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) January 12, 2024
ウクライナ北東部の激戦地アウジーイウカ近郊でウクライナ軍第47独立機械化旅団のM2A2ブラッドレー歩兵戦闘車とロシア軍のT-90主力戦車が戦闘を行う一部始終がウクライナ軍のドローンによって撮影され、ウクライナ国防省によって公開された。市街地で戦う両軍、画面下でちょこまかと動く車両がウクライナ軍のブラッドレー歩兵戦闘車で、中央で火花が上がっているあたりにいるのがロシア軍のT-90M戦車になる。また、映像ではわかりにくいが、ブラッドレーは2両のペアで戦闘していたといわれているが、映像からは2両目の位置は確認できない。下のブラッドレーはとにかく機動力を駆使し、動きながら攻撃を行っているように見える。激しい砲撃戦の上、T-90Mは炎上、車両は制御を失ったのか、砲塔は回転し続け、木にぶつかり、停車する。
ウクライナ軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍のT-90M戦車を接近戦で撃破
— ミリレポ (@sabatech_pr) January 14, 2024
T-90Mは制御を失ったのか砲塔を回転させながら木に衝突。そこを自爆ドローンでとどめを刺したpic.twitter.com/FD8gmp2huC
別の映像ではウクライナ軍がそこへ自爆ドローンを突入させて、とどめをさしているのが確認できる。T-90Mからは3人が脱出しており、車長、砲手、操縦手の乗員3人全員は無事だった様子。
ウクライナ東部での激しい戦闘が垣間見えたわけだが、驚くべきはM2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍が配備する戦車としては最新最強であるT-90Mを撃破したことだ。アメリカからウクライナに200両あまりが提供されているとされるM2A2ブラッドレー歩兵戦闘車、歩兵戦闘車というように、その役目は、前線に歩兵を輸送し、歩兵の戦闘支援を行うことだ。車長、砲手、運転手の 3 人の乗員に加え、 6~7人の兵士を運ぶことができ、重量は30トン前後と軽量で走破性が高く、整地を最大速度66km/h、480kmを走行するなど機動性が高い。主武装はM242 87口径25mm機関砲になり、毎分約200発の連射が可能で、射程は2.5km。今回の戦闘でも主に25mm機関砲を使用していたというのは映像でもわかる。しかし、25mm機関砲は建物や陣地、軽車両を貫通、破壊することを目的にしたもので、装甲車の装甲であれば、貫通する威力があるが、戦車装甲の前では非力だ。T-72以上の戦車装甲の貫通は無理と言われている。
その上、T-90Mはロシア軍がウクライナに投入している戦車としては最新最強。主砲は精度が30%向上した最大射程5kmの2A82-1M125mm滑腔砲になり、Kalina射撃統制システムによって照準は自動補正され、装甲が貧弱なブラッドレーが食らえば一溜まりもない。装甲は複合装甲で数百ミリの厚さを誇り、その上にはRelikt爆発反応性装甲の最新バージョンを搭載、モジュール式の追加装甲も搭載できる。25mm機関砲でこの装甲を破るのは容易ではない。
しかし、M2A2ブラッドレーには対戦車用に2連装発射式のTOW対戦車ミサイルが搭載可能で、予備弾3発も含め計5発を搭載できる。射程は3,750mと主力戦車の主砲の射程に匹敵。1991年の湾岸戦争でソ連製のT-72戦車を主力とするイラク軍と対峙したM2ブラッドリーはTOWを使用し、M1エイブラムス戦車よりも多くの敵戦車を撃破しており、TOWを使用すればT-90Mの破壊も可能だろう。ただ、T-90Mには対戦ミサイルに対抗するためのソフトキル・アクティブ保護システムのShtora-1を搭載している。これは敵の赤外線照準をうけると赤外線誘導を妨害、煙弾を撒き対戦車ミサイルを妨害する。
今回、TOWを使用したのか映像からでは分からない。ただ、25mm機関砲でも当たり所によっては、戦車を破壊することも可能であり、今回、2両でT-90Mに対峙していたということであれば、装甲の弱い後部に攻撃できた可能性もある。T-90Mは制御不能になっており、機関室になり、操縦系統に被弾した可能性は高い。
侵攻前、20両弱しかなかったT-90Mも現在は量産化が進んでいるが、経済制裁でパーツが手に入りづらく、工場もフル稼働の中、スペック通りの能力があるかも疑問なところではある。