欧州の主力戦車はどうなる?MARTE戦車計画がスタート!

ドイツの主要軍需企業であるKNDSドイツとラインメタルは、合弁会社MARTE ARGEのもと、欧州の次世代主力戦車「MARTE(Main ARmoured Tank of Europe)」プロジェクトを正式に始動させました。この画期的なプロジェクトは、欧州の防衛能力を飛躍的に向上させることを目指しています。

MARTE ARGE – Main ARmoured Tank of Europe

MARTEプロジェクトの背景と目的

「欧州の主力装甲戦車」を意味する「MARTE(Main ARmoured Tank of Europe)」プロジェクトは、2024年12月1日に正式に発足しました。キックオフミーティングは2024年12月5日から6日にかけてストックホルムで開催され、そして2025年7月1日、満を持してプロジェクトが本格的に始動しました。本プロジェクトは、ドイツのKNDS Deutschland GmbH & Co.KGとRheinmetall Landsysteme GmbHの合弁会社であるMARTE ARGE社が主導しており、将来を見据えた欧州規格の主力戦車(MBT)の技術開発をその主たる目的としています。これは、現代の複雑な戦場環境に対応できる、革新的かつ汎用性の高い戦車の開発を意味します。

参加国と協力体制

この壮大な計画には、ドイツを筆頭に、ベルギー、スペイン、エストニア、リトアニア、フィンランド、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ルーマニア、スウェーデンといったNATO・EU加盟国12カ国が参加しており、各国の国防省から強力な支援を受けています。単なる政府主導のプロジェクトに留まらず、各国の大手企業から中堅企業、研究機関、さらには革新的な中小企業に至るまで、計51の機関・企業が相互補完的な産業パートナーとして参画しています。これにより、産官学一体となった協力体制が構築され、多様な専門知識と技術が結集されています。欧州防衛基金(EDF)からは約2,000万ユーロの助成金が支給されており、プロジェクトの円滑な推進を財政面から支えています。

プロジェクトの推進体制

プロジェクトの主幹を担うMARTE ARGEは、全体的なコーディネーターとしてプロジェクトの調整を行います。コンサルティング会社Erdynおよび5つのトップクラスの防衛企業[KNDS Deutschland GmbH & Co.KG、Rheinmetall Landsysteme GmbH(ドイツ)、Leonardo SPA(イタリア)、Indra Sistemas SA(スペイン)、SAAB AB(スウェーデン)]からなるコアチームが、その進行を強力にサポートします。これらの企業は、主力戦車の分野における豊富な経験と重要なノウハウを有しており、プロジェクトの範囲が集約された5つの技術作業パッケージのいずれかをそれぞれ管理しています。その他の参加企業も、関連する技術的知識を提供することで、プロジェクト全体の成功に貢献しています。

MGCSとの関係性

©KNDS

現在、フランスとドイツは共同で次世代主力戦車MGCS(Main Ground Combat System)の開発を進めていますが、MARTEプロジェクトの開始は、このMGCSの将来に疑問を投げかけています。2025年1月には、MGCSの開発に参画する企業がフランス・パリに集まり、MGCSを開発する合同会社設立のための株主協定に署名しました。本社はドイツのケルンに置かれ、株主構成はKNDSドイツ、KNDSフランス、ドイツのRheinmetall社、フランスのThales社がそれぞれ株式の25%を保有するという形になっています。注目すべきは、KNDSドイツとラインメタルがMARTEの主幹企業でもあるという点です。

MGCSとMARTEは競合しないのかという疑問が当然ながら浮上しますが、両プロジェクトの位置づけは異なるとされています。MGCSは次世代主力戦車の完成型を目指すものであるのに対し、MARTEは次世代主力戦車技術の基盤設計・研究という位置づけです。つまり、MARTEはあくまで技術の土台づくりと選択肢の多様化に貢献し、将来的にはMGCSとの融合の可能性があるとされています。

しかし、MGCSの開発は、企業間の技術権限や主導権を巡る対立が続き、計画は大幅に遅延しています。また、イタリアなど複数国がMGCSへの参画を求めたものの拒否された経緯もあり、MARTEの進捗次第では、参加国が独自の戦車開発を進めたり、ドイツのレオパルト2シリーズやラインメタル社が開発するKF-51への技術組み込みが進み、これらが広く普及する可能性も指摘されています。MARTEプロジェクトの進展は、欧州の次世代戦車開発の未来図を大きく左右する重要な要素となるでしょう。

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