陸の王者といわれる戦車。重装甲の戦車は頑丈な装甲で守られ、ちょっとやそっとの攻撃では装甲を貫いて致命的な打撃を与えることはできません。しかし、戦車といえども弱点があります。装甲が最も厚いのは基本、車体と砲塔の前面部分ですが前面と比較すると側面、背面、上部の装甲はあまり強くありません。そのため、戦車は敵に対して常に正面を向いて戦闘を行います。しかし、現代戦は携行型の対戦車兵器の進歩、普及によって、歩兵によってどこからでも攻撃が可能になったのと開けた場所よりも、入り組んだ都市部での戦闘が多くなり、戦車の死角から側面、背後、上から攻撃されるケースが多くなり戦車の被害が増えています。そのような環境から戦車を護るために開発されたのがロシア軍のBMPTターミネーターです。
全方位戦闘能力と装甲を併せ持つ
1994年に始まった第一次チェチェン紛争でロシア連邦軍はチェチェン軍のRPGといった携行式対戦車兵器によって多くの戦車を失います。チェチェン紛争は市街地での戦闘が多く、戦車では対戦車兵器を持って都市部に潜むゲリラに対抗できませんでした。そのため、今度は、より小回りの利く、歩兵戦闘車両(IFV)を投入しますが、IFVには障害物の除去能力がないのと、装甲が薄いため、直ぐに打破されてしまい、対人戦闘能力と戦車並みの装甲を合わせ待つ戦闘車両の重要性が明らかになります。そこで、ロシアのUralvagonzavod(ウラルヴァゴンザヴォド)によって対人戦闘能力と戦車並みの装甲備える戦闘車両としてBMPTが開発されます。
BMPTの目的は戦車と一緒に行動し、戦車の脅威となる、敵の戦車や装甲車、歩兵を攻撃し、抑制することで戦車を支援し、被害を無くすことです。基本的に戦車二輌に対し一両のBMPTが随伴します。単独で行動することも可能です。
ズベズダ 1/35 ロシア軍 BMPT-72 ターミネーター2 火力支援戦闘車 プラモデル ZV3695
武装
第一次チェチェン紛争の経験をもとにBMPTには4つの武装が搭載されいます。砲塔には主に対軽装甲車用の2基の30mm自動機関銃2A42、そして同軸の1基の対人用PKTM 7.62mm機関銃で構成されています。2A42は、APERS-T(対人弾薬)、HEF-I(高爆発性破砕焼夷弾)、AP-T(徹甲弾)、およびKE(運動エネルギー弾)などの幅広い弾薬を発射できます。30mm機関銃で850発、7.62mm機関銃で2,000発の弾薬を搭載。30mm機関砲の発射速度は毎分800発、射程は3700mをほこります。これとは別に対戦車誘導ミサイルAtaka-Tランチャーユニット2基が砲塔の両側に取り付けられています。ミサイルは約6000の射程に約60cmの装甲を貫く力があります。そして2基の30mmAG-17Dグレネードランチャーです。この4つの武装により戦車、装甲車、歩兵と全ての脅威に対抗することができます。
砲塔は無人化された電子タレットでマルチチャンネル照準システムと兵器高精度射撃システムを備えたコンピューター化された火器管制システムを備えています。
装甲・防御
BMPTは主力戦車であったT-72、またはT-90の戦車のシャーシをベースにしており、車体の装甲は戦車と同等です。砲塔の両側には6発の発煙弾発射装置が取り付けられています。レーザー照準を検知すると、発煙弾が発射され煙が発生します。乗員は車長、運転手、砲手、および2人のグレネードランチャーオペレーターの5人です。車両は放射線、化学兵器、生物兵器に対するNBC保護に、オプションとして地雷除去装置を取り付けることができます。
BMPT-72(ターミネーター2)
初期のBMPTは欠陥が多く、搭乗員数が多いこともあり、採用には至らず、2013年にはBMPTの新しいバージョン、BMPT-72が発表、メーカー非公式にターミネーター2と呼ばれます。2つのグレネードランチャーが削除され、乗員数は3人に削減。改良された30mm機関銃、装甲、指揮統制システムが追加され、重量は47tから44tに減少するなど軽量化されるも、モジュール式の爆発反応装甲(ERA)とスラット装甲が追加され、防御力が向上します。ターミネーター2の登場により、2017年に晴れてロシア軍での採用が決まり、2018年に4月に最初の車両が配備。12両の調達計画の内、9両がロシア軍中央軍管区第90機甲師団に配備されています。
今後の量産は不透明の中、T-14アルマータのシャーシを使ったT-15 ターミネーター3が現在開発中と噂されています。