ロシアでのウクライナ軍の進撃を支えるストライカー装輪装甲車

ロシアでのウクライナ軍の進撃を支えるストライカー装輪装甲車

ロシア・クルスク州に侵攻したウクライナ軍は僅か2週間ほどで東京都23区の倍の面積の制圧に成功した。この電撃戦において重要な役割を果したのがアメリカから供与されたストライカー装輪装甲車と言われている。

8月6日に始まったウクライナによるロシア・クルスク州への侵攻。15日には同州の要衝スジャの町の制圧を達成。同地点に軍司令部を設置し、これまで92の集落、1250平方キロメートルのエリアを制圧した。この快進撃の成功に大きく貢献したのがアメリカから供与されたストライカー装輪装甲車と言われており、元英国陸軍歩兵将校で防衛アナリスト兼コンサルタントのニコラス・ドラモンド氏はストライカーが、ウクライナのクルスク侵攻作戦で重要な役割を果たしたという見解を述べている。同氏によれば「ストライカーが歩兵部隊を迅速かつ奇襲的に送り込み、敵の防御を突破する集中攻撃”シュヴェルプンクト(Schwerpunkt)”効果を達成できた」とし、また、同車両に搭載された熱センサーにより、ウクライナの指揮官はロシア軍がストライカー部隊を発見する前にロシア軍を特定でき、迅速な砲撃を敵軍に浴びせること可能にしたと述べた。ストライカーはウクライナ歩兵に機動性と防御力を提供、迅速かつ効果的な攻撃を容易にし、広範囲のロシア領への侵攻、制圧に貢献した。

アメリカは2023年1月に発表したウクライナへの25億ドルの軍事支援パッケージで90両のストライカー装甲車とストライカーベースの地雷処理車両LWMR 20両が含まれることを公表。それからこれまで246両のストライカーがウクライナに供与されており、ウクライナ東部や南部の前線に投入されてきた。今年5月にアメリカが米国製兵器をロシアへの越境攻撃に使用する事を国境周辺に限定して容認すると、今回のクルスク侵攻に投入された。

ストライカー装輪装甲車

ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社が開発・製造したストライカーは、2002年から米陸軍で使用されている多用途装輪装甲車シリーズで兵士の輸送や偵察、火力支援など、さまざまな任務に対応できるように設計されている。戦闘地域での部隊展開を迅速に行うための機動力と防護力を兼ね備えており、また、必要に応じて異なるミッションに対応するために、さまざまなバリエーションが存在する。基本構成である兵員輸送のICV型は3人の乗員を含む最大12人の歩兵を輸送できる。ほとんどのタイプには、12.7mm M2ブローニング機関銃または 40mm Mk.19自動擲弾発射機を装備した遠隔操作式 M151プロテクター砲塔が装備されている。この他、30mm機関砲、迫撃砲、対戦車ミサイル、短距離対空ミサイルを搭載したモデルもある。

ストライカーの特徴は装輪式による機動力で、最高速度は整地で97km/h、走行距離は500kmを超え、兵員を速やか戦場に届ける。装甲は14.5mm弾、至近距離での155mm榴弾の破片から乗員を守る。当初は地雷やIED(即席仕掛け爆弾)に対し、脆弱だったが、車体をV字型構造に改良しており生存性は向上している。ウクライナ軍がこれまで使用していたソ連製の歩兵戦闘車BMPシリーズよりも高い生存性を有している。

2014年に生産終了するまで、4,900両が生産され、その内4,466両が米陸軍に納入された。近代化や改良バージョンの生産は続いている。ウクライナ軍に供与された車両は米陸軍で退役したものになるが、現在、何両が予備役として米軍に保管されているのかは不明だ。

ウクライナに供与されたストライカーの大部分は精鋭部隊の一つでウクライナ軍の空挺軍団の中では最強とされる第82独立空中強襲旅団に配備されている。同旅団には最初に供与された90両のストライカーの他、ドイツ製のマルダー歩兵戦闘車40両、イギリスから供与されたチャレンジャー2戦車14両が配備されている。同旅団は今回のクルスク侵攻に参加している。ストライカーはこれまで少なくとも15両を失っており、今回のクルスク侵攻でも複数の損失が確認されており、鹵獲もされている。

ロシアでのウクライナ軍の進撃を支えるストライカー装輪装甲車
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG