ウクライナに英国製対ドローン砲登場!Terrahawk Paladinがついに実戦投入

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英国がウクライナに供与した最新の超近距離防空(VSHORAD)システム「MSI-DS Terrahawk Paladin(テラホーク・パラディン)」が、2025年11月にウクライナ空軍部隊で初めて実戦運用に入ったことが確認されました。ロシア軍が連日、大規模に投入する安価な自爆無人機(ドローン)や、飽和攻撃を仕掛ける巡航ミサイルに対し、本システムは「最後の防衛ライン」としての役割を担うことが期待されています。

このテラホーク・パラディンの実戦配備は、単なる装備品の追加に留まらず、ウクライナの防空能力を質的・量的に底上げする象徴的な支援策として、国際社会から大きな注目を集めています。特に、国際基金「International Fund for Ukraine(IFU)」を通じた複数国の共同支援によって実現した点も、その意義を深めています。

Terrahawk Paladin

テラホーク・パラディンは、英国のMSI Defence Systemsが開発した先進的な固定・半固定型短距離防空システムです。その設計思想は、現代戦において最も対応が困難とされる脅威、すなわちドローン、徘徊型兵器(Loitering Munition)、そして地形追従で低空を侵入する巡航ミサイルの迎撃に特化しています。

本システムの迎撃能力の中核を成すのは、強力な30mm Mk44 ブッシュマスターII機関砲です。特に、最新のプログラマブル空中爆発弾(Air Burst Munition: ABM)を使用できる点が、小型無人機への対処において決定的な優位性をもたらします。ABMは、目標の至近距離で正確に炸裂し、発生する大量の破片効果(フレシェット)によって、直撃させにくい小型ドローンを確実に破壊します。この30mm砲システムは、約2kmの有効射程内で高い撃墜率を実現しており、必要に応じて40mm砲への換装も可能な柔軟性の高い設計となっています。

テラホーク・パラディンは、高度に統合されたセンサー群によって、全方位からの脅威を迅速に捕捉・識別します。

  • 360度カバーのAESAレーダー:全周の空域を監視し、複数の目標を同時に追尾します。
  • 光学・赤外線カメラ:昼夜を問わず、目標の精密な画像追尾を可能にします。
  • レーザー測距装置:正確な距離情報を取得し、射撃管制の精度を高めます。

これらの多重センサーから得られた情報は、AIベースの追尾アルゴリズムによって解析されます。このAIは、高速かつ小型の目標を自動で補足し、複雑な軌道を描くドローンに対しても安定した追尾を維持します。結果として、テラホーク・パラディンは夜間や悪天候下でも安定した迎撃能力を発揮し、ウクライナ軍が切望する「全天候型の対ドローン防御」を実現します。

テラホーク・パラディンの戦場での生存性や柔軟性を高めているのが、そのユニークな搭載・展開方法です。システム全体がNATO標準のDROPS(Demountable Rack Offload and Pickup System)フラットラックに搭載されています。これにより、MAN HXなどの軍用トラックで容易に輸送が可能であり、必要な防衛拠点へと短時間で展開できます。ラックを地上に降ろして固定防衛ポイントとして使用することも、トラックに搭載したまま移動式防空陣地として運用することもできるため、前線の部隊防護から後方の重要インフラ防衛まで、戦術的な配置の柔軟性が非常に高いのが特長です。

さらに、本システムは完全遠隔操作に対応しており、オペレーターは車両内や強固な防護シェルター内など、安全な場所から脅威の迎撃を行うことができます。また、発電装置を内蔵しているため、外部からの電力供給なしで独立して長期間運用できる点も、電力インフラが標的となる現代戦の戦場での生存性を向上させています。

ウクライナでの実戦運用と戦略的価値

テラホーク・パラディンは、2025年11月にウクライナ空軍の第156対空ミサイル連隊(チェルカシー州)での運用開始が公表されました。公開された映像では、MAN HXトラックに搭載されたシステムが、ロシア製の無人機を追尾する様子が確認されています。ロシア軍が夏以降、特にドローンによる攻撃を再び激化させる中、本システムは国内の重要インフラ(発電所、変電所、石油貯蔵施設など)や、前線への補給拠点の防衛に集中的に投入されているとみられています。

ロシア軍は2023年以降、「Shahed」系ドローンや小型FPV無人機を大量に投入し続けています。これは、安価なドローンでウクライナの高価な防空ミサイル(例:NASAMS、IRIS-Tのミサイル)を消耗させる**「コスト非対称型攻勢」**を意図したものです。

これに対し、テラホーク・パラディンはミサイルではなく、比較的安価な機関砲の弾薬で迎撃を行うため、コスト効率に優れた持続的な防空を可能にします。この特性は、長期化する消耗戦において、ウクライナの防空予算を保護する上で極めて重要です。

テラホーク・パラディンは、既存のNASAMS、IRIS-T SLM、Gepard自走対空砲といった中・短距離防空システムと組み合わせることで、多層防空網の最も底辺、すなわち迎撃の「最後の一線」として機能します。特に、巡航ミサイルが目標に到達する終末段階での迎撃や、低高度を飛行する小型の脅威に対して、その威力を発揮します。

供与数は公表されていませんが、複数のシステムがすでに稼働しており、ウクライナ側はロシアの無人機生産ペースの加速に対抗するため、さらなる増備を強く望んでいます。ドローン戦が激化するウクライナ戦争において、英国製テラホーク・パラディンの導入は、単なる新装備の導入を超え、現代戦の防空のあり方を象徴する存在となりつつあります。

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