イギリス軍は保有するFV107シミター偵察戦闘車全両を廃棄する計画を発表した。FV107シミターは2023年4月に英陸軍から退役していた。しかし、これらはウクライナに供与される可能性がある。
5月10日にイギリス政府が提供した新たなレポートにより、イギリス陸軍の装軌式装甲戦闘車両シリーズCVR(T)114両が、退役後、廃棄を待っている状態である事が明らかになった。ジェームズ・カートリッジ国防調達担当大臣は114両のうち97両はFV107シミター偵察戦闘車になり、FV107シミターを含め、すべてが廃棄処理中であると述べた。2023年4月に退役して以降、シミターの処分は英国防衛装備品販売庁によって管理されてきた。 2023年12月に更新された最新の情報によると、1両のシミターが処分され、18両が外部に売却されている。ただ、シミターはウクライナへの軍事支援パッケージにも含まれており、現状のウクライナの戦況を考えれば、廃棄される車両はウクライナに渡る可能性がある。
FV107 Scimitar
FV107 シミター(Scimitar)は、イギリス陸軍が使用していた装甲偵察車・軽戦車。イギリスのアラヴィス社によって装軌式装甲戦闘車両シリーズCVR(T)の一つとして設計され、1971年に初めて配備された。主に偵察任務に使用され、その機動力と火力により、威力偵察、情報収集、火力支援を行う。主砲の30mm RARDEN機関砲は毎分90発で最大射程は2,000mを誇る。副武装に7.62mm機関銃を装備。軽装甲目標や歩兵に対して有効な火力を提供。装甲には偵察車両としての機動力を重視し、軽量アルミニウム合金製の装甲を使用、砲弾の破片や小火器に対して基本的な防御力は備えている。
ジャガーJ60 4.2リットル6気筒ガソリンエンジンを搭載し、最大速度は約80km/h、走行距離は450km。重量は12トンをわずかに超えるだけで、空中輸送が可能であり、C-130J輸送機に搭載できる。乗員は3名で構成され、車長、砲手、運転手が含まれる。
2010年12月には近代化改修を実施したFV107 シミターMkIIが登場。対戦車ロケット弾に対抗するためケージ装甲が追加。対戦車地雷に対する防御力も強化され防護力が向上。その分、車体重量は上がったがエンジンも高出力、燃料効率の高い新しいディーゼルエンジンに置き換えられた。
1982年のフォークランド紛争、1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争とイギリスが直近で関わってきた戦争にはほぼ参加している。しかし、登場から半世紀が経ち老朽化。計325両が配備された同車両も2022年11月の時点で170両にまで減っていた。そして、2023年4月には全て退役となった。シミターの役割は2025 年に就役する予定のAjax歩兵戦闘車が担う予定だ。
ウクライナに供与
イギリス政府はロシアによるウクライナ侵攻が始まった1か月半後にFV104サマリタン装甲救急車、FV106サムソン装甲回収車、FV103スパルタン装甲兵員輸送車などの他のCVR(T)ファミリー共にシミター40両を送る事を発表しており、2023年9月までに23両の供与が確認されている。2024年5月初旬に発表した5億ポンドの新しい軍事支援パッケージにもAS90 155mm自走榴弾砲と共にシミターがリストに含まれていることが確認されている。廃棄と謳っているが残った97両のいくつかはウクライナに渡る可能性が高い。