ウクライナの戦場で適応できなかったドイツ製兵器

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今年1月、ドイツの駐ウクライナ武官(大使館副防衛武官)が、ドイツ・ザクセン州のデーリッツ陸軍士官学校で行った演説は、ドイツの防衛産業と軍関係者に大きな衝撃と懸念を与えた。その演説で彼は「ドイツ製兵器の多くがウクライナの戦場に適合していない」と発言したのだ。この発言は当初、機密扱いとされ、一部のドイツ軍関係者にしか共有されなかったが、情報が漏洩し、ドイツメディアによって報道されるに至った。これは、ウクライナへの多大な支援を行うドイツにとって、直視すべき厳しい現実を突きつけるものであった。

ドイツは、ウクライナへの支援額において米国に次ぐ第2位の国であり、金銭的な支援だけでなく、多くの兵器をウクライナに供与してきた。しかし、ウクライナに駐在し、戦場の実態を間近で見てきたドイツ軍武官が明らかにしたのは、高度な性能と複雑な技術を誇るドイツ兵器が、メンテナンスの難しさや高コスト、そして信頼性の欠如といった問題から、ウクライナの過酷な戦場で期待された効果を十分に発揮することが難しいという「残酷な事実」だった。

高性能兵器の誤算:ウクライナの戦場で露呈した課題

具体的な兵器の事例を見ていくと、その問題点はより明確になる。

PzH 2000自走榴弾砲:世界最高峰の榴弾砲が機能不全に

PzH 2000は、ドイツ軍だけでなくイタリア軍、オランダ軍などNATO加盟7か国が採用する、分間8発の射撃速度と最大射程70kmという精密な射撃を誇る「世界最高の榴弾砲」と称される兵器だ。しかし、その高性能とは裏腹に、ウクライナの戦場では耐久性に深刻な問題があることが判明した。強度の高い戦闘下では砲身と部品が早期に限界を迎え、部品交換が追いつかず、稼働率はわずか25~30%にまで低下。フランス製のカエサル自走砲に大きく劣る機能不全に陥っている。これは、PzH 2000が砲撃頻度よりも長射程と精密さに重点を置いて設計されたため、強度の高い全面戦争には不向きであったことを示している。

レオパルト2A6戦車:ドローンに対する脆弱性と整備の難しさ

NATO加盟13カ国が採用するドイツ製戦車レオパルト2は、100両以上がウクライナに供与されている。生産国であるドイツは、レオパルト2シリーズの中でも比較的新しいモデルであるA6を18両供与したが、そのうち13両を失うという壊滅的な状況に陥っている。優れた性能を持つ一方で、ドローンに対する脆弱性が露呈した。また、その高性能ゆえに軽微な損傷でも現場での修理が困難であり、一旦ドイツやポーランドに送り返す必要があり、高い整備能力が求められる点も大きな課題となった。

IRIS-T SLM防空システム:高価な弾薬と限定的な供給

IRIS-T SLMは、ドイツ製の中距離防空ミサイルシステムで、ほぼ100%近い迎撃率を誇る先進的なシステムだ。非常に有効ではあるが、弾薬が高価であり、供給が限定的であるため、頻繁に行われるロシア軍の自爆ドローンやミサイル攻撃に対する防空能力には限界があり、防空任務における役割は限定的となっていた。

さらに、ドイツが供与したアメリカ製防空システム「パトリオット」も、車両の老朽化や部品不足から、実戦投入が難しいと指摘されている。

皮肉な現実:最新兵器よりも評価の高い冷戦時代の兵器

ドイツが誇る最新兵器が軒並み低い評価を受ける中で、皮肉にも高い評価を得たのが、冷戦時に開発され、既にドイツ軍では退役していた兵器であった。

ゲパルト対空自走砲:対ドローン兵器として大活躍

ドイツから供与された兵器の中で最も評価が高いのが、ゲパルト対空自走砲だ。西ドイツ時代の1970年代に開発されたこの兵器は、戦闘機の高速化と高高度化、対空ミサイルの普及により需要が薄れ、2010年にはドイツ軍の全車両が退役していた。しかし、ゲパルトはウクライナで対ドローン兵器として大活躍した。古い故に整備が容易であり、当初懸念された弾薬不足も生産体制が整うと比較的安価で入手可能になった。現在では、ウクライナ軍の主力防空システムの一つとなっている。

レオパルト1A5戦車:機動性と軽量さが戦場で評価される

レオパルト1は、1960年代に戦後ドイツが初めて開発・生産した第二世代の主力戦車だ。主砲は105mmで装甲も心もとないが、ドローンが普及したウクライナでは、戦車は火力と装甲を前面に出した戦い方は行われていない。むしろ、40トンという軽量さと、最高時速65km/h、航続距離600kmという機動性の高さが好評を博している。レオパルト2、エイブラムス、チャレンジャー2といった他の西側製戦車が車体重量60トンを超え、活動範囲が限られ、損傷しても回収が容易ではないのと対照的だ。

この他、マルダー歩兵戦闘車も現場からの評価が高い。これらの冷戦時代の兵器に共通して言えるのは、古いからこそメンテナンスや修理が容易であり、柔軟性と即応性が求められるウクライナの戦場に適していたということだ。

ウクライナの戦場から貴重な教訓を得たにもかかわらず、ドイツの防衛産業は兵器の高性能化を推し進めている。新しいRCH-155装輪自走砲やレオパルト2A8主力戦車は、いずれも自動化が進み、機械的にも複雑化しているため、メンテナンスはさらに複雑化し、コストも上昇している。

これは、現代戦における兵器開発の方向性、特に技術革新と実戦における運用性とのバランスについて、防衛産業が再考を迫られていることを示唆している。高性能化は確かに魅力的だが、それが必ずしも戦場の現実に即しているとは限らないという厳しい教訓を、ウクライナの戦場は突きつけているのだ。今後は、最新技術の追求だけでなく、現場での運用性、メンテナンスの容易さ、コスト効率といった要素をより重視した兵器開発が求められるだろう。

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