独スカイレンジャー自走対空砲500両購入へ!ゲパルトに代わる対ドローン兵器

© 2025 Rheinmetall AG

ドイツの軍需企業ラインメタル社は、ウクライナ紛争で自走対空砲ゲパルトがドローン兵器に対する費用対効果の高い兵器として評価されていることを背景に、今年後半にドイツ連邦軍から500両規模のスカイレンジャー30(Skyranger 30)自走対空砲の追加注文を受ける見通しであることを発表しました。

Flugabwehrkanonenpanzer Skyranger – Rheinmetall erwartet noch dieses Jahr Milliardenauftrag von der Bundeswehr

ドイツの防衛専門メディアhartpunktの報道によれば、ラインメタルのアルミン・パペルガーCEOは、アナリストとの電話会議で、2025年後半までにドイツ連邦軍からスカイレンジャー自走対空砲の60億~80億ユーロ規模の受注を獲得する見込みであると明かしました。具体的な車両数については安全保障上の理由から言及を避けましたが、金額規模とスカイレンジャーのユニットコストから、500両から600両と推測されています。納入スケジュールについては、第1フェーズが現在から2029年まで、第2フェーズが2029年から2035年までとなる見込みです。

スカイレンジャーの取得に向けた動きは既に始まっており、2024年2月にはドイツ連邦軍がラインメタル社に対し、ボクサー装甲車のシャーシに搭載されるスカイレンジャー30のプロトタイプ1台と量産型18台の開発・納入を5億9500万ユーロで発注しています。試作車は2025年1月に引き渡され、量産型車両は2027年と2028年に就役する予定です。今回報じられた500両規模の追加発注が事実であれば、先行する試験での評価が極めて良好であったことが推測されます。

Skyrenger 30自走対空砲

自走対空砲「スカイレンジャー(Skyranger)」は、ドイツのラインメタル・ディフェンスと、その子会社であるスイスのOerlikon Contravess社によって共同開発された短距離防空システムです。両社が開発する固定砲台ベースの防空システム「スカイシールド」を基盤としています。スカイレンジャー30には、毎分1,200発という高い発射速度を誇るOerlikon KCE 30×173mm機関砲が搭載されています。このエリコン砲の最大の特徴は、空中炸裂弾であるAHEAD(アドバンスト・ヒット・エフェクト・アンド・ディストラクション)弾を発射できる点にあります。AHEAD弾は空中で炸裂し、30mm弾の場合、約160発のタングステン弾体を散弾のように飛散させます。これにより、たとえ目標に直撃しなくても、散布された弾体が高強度を誇るタングステン合金で構成されているため、確実に目標に損害を与えることが可能です。弾丸の信管は起爆時間を調整できるため、目標の手前で起爆させることで、航空機やミサイルはもちろんのこと、小型ドローンやRPGのようなロケット弾をも確実に迎撃することができます。エリコン30mm砲の有効射程は3kmで、バーストショットでは20発の砲弾が発射され、最大300発の砲弾を搭載できます。副武装として7.62mm同軸機関銃も備え、オプションでスティンガーのような短距離対空ミサイル2発を搭載することも可能です。

スカイレンジャーは高度なセンサーと射撃管制システムを搭載しています。最大探知範囲20kmのS-バンドAESAマルチミッションレーダー(AMMR)に加え、赤外線監視装置、HD熱画像・カメラ、レーザー距離計を組み合わせたTREOトラッカーにより、目標を検知し、自動で追跡と照準を行います。また、コントロールセンターや外部レーダーから送られてくるデータに基づいて目標を捕捉し、攻撃することも可能です。射撃管制システムは目標を自動追尾し、最適な初速と起爆時間を設定して、自律的に攻撃を実行します。

車両プラットフォームには、ラインメタル社が製造するボクサー装輪装甲車が採用されています。ボクサーは整地での最高速度103km/h、航続距離1050kmという高い機動力を誇り、その能力を活かして広範囲の防空任務を担うことができます。また、スカイレンジャーには、より高威力な35mm機関砲を搭載したスカイレンジャー35も存在し、同様の性能を発揮します。

再評価される自走対空砲

かつて自走対空砲は、戦闘機の高速化と高高度化、そして対空ミサイルの普及により、一時期廃れた兵器でした。しかし、ロシア・ウクライナ戦争でドローン兵器の脅威が顕在化したことで、その需要が改めて高まっています。自爆ドローンのコストは数百万円程度であり、FPV(一人称視点)ドローンのような小型ドローンに至っては、民生品を流用していることもあり1機あたり十万円にも満たない場合があります。これに対し、高価な対空ミサイルは費用対効果が悪く、生産も追いつかないという課題があります。その点、対空砲の砲弾コストは安価で、量産スピードも速いため、費用対効果の高い対ドローン兵器として対空砲が見直されています。自走式であれば配備場所を選ばず、柔軟な運用が可能です。ウクライナには、ドイツ軍で退役したゲパルト自走対空砲が50両以上供与されていますが、防空任務で目覚ましい活躍を見せており、供与されたドイツ製兵器の中で最も高い評価を得ています。スカイレンジャーは既にオーストリア、デンマーク、ハンガリーからも注文を受けており、複数の国が導入を検討しています。また、各国でも新たな自走対空砲の開発が進められており、ドローンの脅威が増大する現代において、自走対空砲の需要は世界中で高まっています。

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