戦車がないロシア、恒例の戦車バイアスロンを中止に

mod russia

ロシアメディアによればロシア国防省は毎年恒例の「戦車バイアスロン」を2年毎に開催することに決め、通例であれば2023年夏に開催される次回大会を2024年にすることを決定しました。「戦車バイアスロン」はこれまで毎年開催されていましたが、この背景には深刻な戦車不足が考えられます。

戦車バイアスロンとは

「戦車バイアスロン」は2013年にロシアで発祥した軍事スポーツです。各国の戦車クルーが、走行、射撃、戦術能力を競うレース競技で、戦車がコースを駆け回り、静止目標と移動目標の両方を含む目標に対してオート照準など近代的な射撃管制装置は使用せず光学機器のみで照準を行い実弾射撃演習を行います。競技はいくつかのラウンドで構成されており、すべての目標に命中しながら、できるだけ短い時間でコースを完了するために競争します。勝利チームは、完了時間、正確性、およびエラーや目標の失敗に対するペナルティに基づいて決定されます。主な参加国はいわゆる東側と呼ばれる国、またはロシアと親密な国、ロシア製兵器の顧客になり、中国、ベラルーシ、インド、カザフスタンなどが常連で、多い時には20カ国以上参加しています。過去にはまだ関係良好だった時にアメリカも招待しています。過去10回大会が開かれていますが、全てロシアが優勝しており、ロシア陸軍の戦車兵の技能を世界に知らしめる場であり、ロシア軍の威信を示す重要な場です。それが今年は開催しないと報じられています。

競技会に出せる戦車と戦車兵がいない

その理由は推測するにウクライナ侵攻に伴い、主要な戦車、優秀な戦車兵が出払っている、若しくは喪失したためだと思われます。既にロシア軍は少なくとも1900両、最大3600両の戦車を喪失。侵攻前に稼働配備状態だったのは2500両とされるので、それをほぼ失っている計算です。戦車バイアスロンに参加する戦車はこれら稼働状態の戦車に含まれます。2022年9月には戦車バイアスロン専用に設計された3両のT-72B3がドンパスで破壊、鹵獲されたことが確認されています、現在、ロシア軍は倉庫に眠っていた古いT-62やT-54/55を駆り出していること考えると、競技会用の戦車は既に全て戦場に投入されている可能性があります。

競技会はロシア軍の威信をかけた大会です。これまでの成績を考えると必ず1位を取らなければなりません。しかし、練度の高い戦車兵も残っていない可能性があります。前線に駆り出されているのはもちろん、戦車の損失はイコール、戦車兵の損失でもあり、破壊された車両の3倍の兵が死傷しているかもしれません。生き残っても、直ぐに次の車両に乗せられて前線に送りだされるでしょう。

2022年大会も開催が危ぶまれていましたが、開催され、ロシアが優勝しています。この時はまだ余力があり、対外的にもいつもと変わらない様子を見せたかったのかもしれません。しかし、戦争は1年以上続き、思わぬ苦戦と想定外の損失で既に背に腹は変えられないのでしょう。だが、中止とせずに2年毎の開催として苦し紛れの延期とした形です。ロシアは戦車バイアスロンだけではなく、国際陸軍競技会(Army Games)の延期、2年毎の開催を決めています。

https://tass.ru/armiya-i-opk/17546183

https://zona.media/news/2023/04/18/armi

戦車がないロシア、恒例の戦車バイアスロンを中止に
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG