ドイツは以前より話があったゲパルト自走対空砲(Gepard1A2)50両を提供することを決めましたが、ここにきて、肝心の弾がないという課題が出てきています。
ウクライナへの重火器の支援を控えてきたドイツですが、他のNATO加盟国が積極的に重火器の支援を行うなか、国際的な圧力とウクライナでのロシアの蛮行を目のあたりにしたドイツ国内世論の声もあり、4月26日、ようやく重火器提供に舵を切り、以前より話があがっていたゲパルト自走対空砲の提供を決定しました。ゲパルトは既にドイツ軍では退役しており、保管状態にあります。これを保管しているドイツの軍需企業Krauss-Maffei Wegmann(KMW)のCEOはロシアのウクライナ侵攻が始まった直後にウクライナへの支援のために提供する用意があると述べていましたが、当時はドイツ政府にその意思がありませんでした。その頃からKMWは提供へ向けた準備が進められていたと思われ、保管状態の確認や整備は終えており、提供はスムーズに行くかもしれません。
Photo Bundeswehrドイツの兵器会社Krauss-Maffei Wegmann(KMW)はドイツメディアDie Weltの取材に対し、ゲパルト(Gepard)自走対空砲50両をウクライナに提供する準備があると答えました[…]
しかし、提供に向けて進める中で大きな課題が見つかります。それがゲパルトの主砲である”35mm対空機関砲”に使用する弾薬の十分な備蓄がドイツには無いことです。
ブラジル、カタールに打診
ゲパルトは1973年から西ドイツ軍に配備が始まった35mm対空機関砲を搭載する自走対空砲です。対空兵器の主流が対空ミサイルに代わる中、ドイツ軍内では2010年に退役、保管状態にあります。つまり、10年以上使用していなく、今後使う予定もなかったので弾薬はもちろん補充していません。そして、退役した車両の一部をブラジル、ヨルダン、カタールに供与しており、その時に備蓄されていた大量の弾薬も合わせて販売。ドイツに残る在庫は多くはありません。そこで、ドイツ政府はブラジルとカタール、ヨルダンに弾薬を融通できないか打診しています。しかし、ブラジルのボルソナーロ大統領はプーチンよりとされ、ロシアへの制裁を拒否する立場をとっているため、ブラジルからの提供は難しいかもしれません。
スイスは拒否
無ければ製造すればよく、ゲパルトの35mm砲機関砲(エリコンKD 35mm 機関砲)の開発製造元で弾薬を製造しているスイスの軍需企業エリコン社に35mm弾の再輸出を求めました。しかし、永世中立国であるスイスは戦争の交戦国に対して中立な立場であることが義務づけられています。ウクライナ軍で使用されることが分かっている35mm弾のドイツへの提供はウクライナへの間接的な支援に繋がり、この中立という立場を逸脱することになり、ドイツからの要求を拒否しました。
つまり、カタールかヨルダンから弾薬を融通してもらうしかない状況です。弾薬が無ければ、50両のゲパルトはただの鉄くずでなんの役にも立ちません。
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