西側戦車の移動のためにウクライナに提供されるM60AVLB架橋戦車

西側戦車の移動のためにウクライナに提供されるM60架橋戦車
US Army

アメリカはウクライナへの軍事支援としてM1A2エイブラムス戦車を提供しますが、これと併せて、M60A1架橋戦車も提供します。この架橋戦車、エイブラムスを始めとした西側製戦車がウクライナで活動する上で非常に重要な車両になります。

アメリカのバイデン大統領は3月3日に4億ドルに及ぶ、ウクライナへの追加軍事支援を発表した際に「架橋戦車」の提供を始めて発表しました。そして、それは米軍が保有する3つの架橋戦車の内、M60A1 AVLBとされています。

M60 AVLBとは

橋を架けるM60 AVLB
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M60 AVLBは文字通り、米陸軍のかつての主力戦車M60 パットンをベースにした架橋戦車です。架橋戦車とは川や壊れた橋などの隙間の障害を他の車両が一時的に通過できるように橋を架ける支援車両です。M60 AVLBはM48 AVLBを置き換える形で1960年代に当時の主力戦車であったM60の改良型のM60A1の砲塔を取り除き、シャーシの上にハサミ型の折り畳み式橋とそれを展開するための油圧装置とバッテリーを搭載する形で開発されました。橋は長さは19m 、幅4mと大きな河川は無理ですが、小川や壊れた橋の中腹に橋を架けることは可能です。橋は14トンのアルミニウム製で重量52トンのM60戦車が通過できるよう、60トンまでの重さに耐えられるように設計されています。橋は3~10分ほど展開、10~60分ほどで回収できます。車両の最高時速は48km/h、走行距離は420kmです。その後、重量60トンを超えるM1エイブラムス戦車が登場したことで、70トンの重量まで耐えられる改良版のMLC70の橋を搭載したモデルが登場。ウクライナに提供されるのはMLC70モデルとされます。M60 AVLBは計400両が生産され、米軍は260両を保有、今後はエイブラムスのシャーシをベースにしたM1074 JABSに切り替えられる予定です。

西側戦車の移動、回収に重量な車両

ウクライナ軍にもT-55やT-72戦車のシャーシをベースにしたAVLBを持っています。しかし、これらの車両はあくまでソ連製戦車の支援を目的としているため、西側戦車の重量に耐えることができません。ウクライナ軍の現在の主力戦車であるソ連製のT-72やT-80戦車の重量は大抵40トン代です。装甲などを追加してもせいぜい、40トン後半、ウクライナの架橋戦車もそれに合わせて50~60トンに耐えられる設計になっています。それに対し、今度、ウクライナに提供される西側戦車の重量はイギリスのチャレンジャー2、ドイツのレオパルト2A6、アメリカのM1A2エイブラムスともに62トン以上とソ連製戦車より20トン近い開きがあり、ウクライナが保有する架橋戦車ではその重さに耐えきれません。また、ウクライナ国内の橋梁といったインフラもソ連製戦車の重さに耐えられるように設計されており、西側戦車の重さに耐えられるかは不透明で通過できない、無理に渡れば破損させる恐れがあります。そうなれば、移動が制限され、せっかく提供された西側戦車も戦場で活躍することはできません。M60 AVLBの提供はこれら西側戦車の移動をサポートする上で非常に重要です。

そして、もう一つ、戦況が不利になった際の迅速な戦車の撤退、故障、若しくは破損した戦車の回収を行う上でも西側戦車の重さに耐えられる架橋戦車は必要不可欠です。米欧が一番恐れていることが西側戦車がロシア軍に鹵獲されることです。イギリスも戦車回収車を提供するなど、鹵獲を防ぐために西側は神経を尖らせています。各戦車大隊に配備されるなら、それなりの数は必要ですが、ウクライナに提供される総数は明らかにされていません。

Source

https://www.popularmechanics.com/military/aviation/a43232960/us-supplies-patton-tanks-to-ukraine/

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