価格破壊!インドの155mm砲弾が世界市場を席巻する

ロシア・ウクライナ戦争の影響で世界的に砲弾が不足し、コストが増大する中、インドはこれをチャンスと捉え、豊富な労働人口、安価な労働力を背景にした低コスト砲弾で砲弾供給国としての地位を確立しつつある。

ロイター通信がインド政府筋の話として報じたところによると、ニューデリーで生産される155mm砲弾の価格は1発あたりわずか300~400ドルだという。この価格は格安で、西側価格の10分の1以下だ。インドのモディ首相は兵器輸出で外貨を稼ぐことに注力しており、2029年までに武器輸出を60億ドルに増やしたいと考えていると報じている。最新会計年度の武器売上高は35億ドルと目標を2分の1ほど下回ったが、それでも10年前の武器と防衛部品の輸出額2億3000万ドルからは大幅に増加している。現在の輸出品は主に砲弾、小火器、防衛装備品だが、今後は砲システムなど重火器の輸出も計画している。とあるインド企業は榴弾砲を1門あたり約300万ドルで販売したと述べている。これは欧州製の榴弾砲のおよそ半額だ。

砲弾の需要はロシア・ウクライナ戦争、中東情勢の悪化で需要が大幅に増加した。ウクライナ軍は月間10万発以上の砲弾を使用、ロシアによる侵攻前、西側最大の生産量を誇っていたアメリカの155mm砲弾の月産生産能力が1万4000発、西側が抱えていた在庫は一気に底を尽きた。西側は長年、航空戦力と精密誘導兵器を優先し、砲弾の生産を軽視し、砲弾の生産ラインを縮小していた。そのため、需要の急増に対し、生産が全く追い付かない事態になった。また、世界的なコスト高も砲弾を生産する企業とそれを調達する政府を苦しめた。2021年の155mm砲弾の一発当たりのコストは約2000ドル前後だった。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻により上昇し、2022年には3000ドル以上に。そして、2023年には8000ドルと急騰した。西側は急いで生産ラインの拡大に取り込むが、多額の費用と時間が必要で一朝一夕でできることではない。それをビジネスチャンスと捉えたのがインドだ。

パキスタンや中国と陸地で続く隣国と領土問題を抱えるインドは大量の砲弾を生産できるラインを維持してきた。また、西側製、ロシア製と双方の兵器を採用するインド軍の事情もあり、西側規格、ロシア規格の砲弾を生産できる。西側が砲弾の調達に困窮する中、ウクライナに軍事支援を行う欧州諸国は調達先としてインドを検討。ロシアとも友好関係にあるインドは、戦争における中立性を維持するため、ウクライナをはじめ​​とする西側諸国への弾薬供給に消極的であった。しかし、戦争に伴う欧州諸国の弾薬需要の高まりは、インドにおける兵器輸出を後押し、2024年には欧州がインドから調達した砲弾がウクライナ軍に渡った事が明らかになっており、ウクライナ軍がポーランドから供与された155mm自走榴弾砲Krabでインド製砲弾を使用されたと報じられている。Krabはポーランドで開発された西側規格の155mm榴弾砲であり、インドが西側規格の砲弾を生産できる事を示した形になる。この件に関してはロシアがインドに抗議している。

米国やドイツ、フランスといった武器供給国は自前で生産ラインの拡大を行っており、米国は今年中に月間10万発以上の生産能力を達成する予定だ。ドイツのラインメタル社は現在、月産6万発程を生産、2027年まで年間110万発以上の生産能力を達成する計画だ。自前で生産できる国はいいが、小国、中堅国はそうはいかない。バルト三国のエストニアは自国で砲弾を生産する為、インド企業による国内製造ラインの設置を検討している。

インドはこれまで、どちらかというと兵器を輸入する立場だった。近年は国産兵器の開発生産に注力。インドが進める「Make in india」計画に基づき、兵器の内製化を進め、インド初の国産空母ヴィクラントを就役させ、国産戦闘機のTejasやアージュン戦車の開発量産に成功している。今度はこれら開発した兵器の輸出を画策している。海外セールスのため、インドは2026年3月までに少なくとも20名の新たな駐在武官を外国大使館に派遣する計画だ。インドの155mm砲弾製造能力は大幅に拡大する見込みで、国営企業を除いた民間企業だけでも2027年度までに年間30万発以上の砲弾を生産すると予想されている。

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