ノルウェーの軍需企業Nammo社はL52 155mm榴弾砲の砲身で発射できるラムジェットを搭載した超長射程誘導砲弾「155MM HE-ExR」の開発を行っています。実現すれば、155mm榴弾砲は射程150kmの長距離精密誘導兵器に代わります。
各国の榴弾砲の射程はほぼ一緒
火器の射程は非常に重要です。相手の射程範囲外から攻撃を行えば、自軍はほぼ被害を受けることなく一方的に攻撃が可能です。現代では長距離攻撃は精密誘導兵器のミサイルが担っていますが、高価であるため多用はできません。第一次大戦から100年以上たった今でも戦場の長距離攻撃の主役は砲兵であり、砲兵は「戦場の女神」言われ、前線部隊を後方から的確に支援してくれます。155mm榴弾砲の射程は20~30kmが平均でロケット推進弾を使用すれば、40kmまで射程は伸び、戦車といった戦闘車両の射程外から安全に攻撃を行うことができます。しかし、ロシア基準の152mm、中国の155mm砲も同等の機能を擁しており、各国の榴弾砲の射程に大きな差はなく、敵を射程に捉える範囲に入れば自分たちも攻撃をうける可能性があります。そのため、各国ではより長距離を攻撃できる榴弾砲や砲弾の開発を進めています。
Photo by Ana Henderson長距離攻撃には通常、ミサイルといった精密誘導弾を使用するが米陸軍はM1299自走砲とM982 エクスカリバー弾で70km先の標的に直撃させる長距離射撃を成功させた。[…]
ラムジェットを搭載した155mm砲弾
M72ロケットランチャーやAIM-120 AMRAAMといったミサイル、小口径から大口径の様々な弾薬を製造するノルウェーの軍需企業Nammo社はアメリカのボーイング社と共同でL52タイプの155mm榴弾砲で発射可能なラムジェットを搭載した超長射程誘導砲弾「155MM HE-ExR」の開発を行っています。ラムジェットは高速度で飛行するときに生じる圧力(ラム)で空気を圧縮し、燃料を噴射させて燃焼させる方式のジェットエンジンで、これを搭載する155MM HE-ExRはミサイルに近い砲弾です。通常の砲弾よりは高価ですが、ミサイルよりは安価で中間を埋める兵器といったところでしょうか。誘導弾になり、詳細な誘導方式は明らかにされていませんが、同じく誘導砲弾であるエクスカリバーと同じGPS誘導になると思われます。100km以上離れたサッカー場の中心サークルを狙う精密さを持ち合わせています。
似たような砲弾では米軍とレイセオン社が開発する射程100~120kmの「XM1155 ERAP」があります。
西側の155mm自走榴弾砲にほぼ対応
この砲弾が対象としているのはラインメタル社が開発製造するL52タイプの155mm榴弾砲になり、これはスウェーデンとノルウェーが共同開発したアーチャー自走榴弾砲、アメリカのM109、ドイツのPzh2000、韓国のK9などに採用されており、多くの155mm自走榴弾砲と互換性があります。2019年に初めての射撃テストが行われ、2022年6月に既存の砲兵システムとの互換性がテストで確認されています。ちなみに自衛隊の保有する155mm砲についてはL52を使用しているという情報はありませんでした。
Nammo社は射程70~85kmの155MM HE-LRも開発しており、これらは2023年の実用化を目指しています。155MM HE-ExRが実現されれば、L52を採用する榴弾砲は超長射程精密攻撃の能力を手に入れいることになります。
Source