ウクライナを支援するため世界中から多数の武器が送られている。その多くは携行式の対戦車兵器や対空ミサイル、銃器、迫撃砲といった小火器になり、車両や航空機といった大型兵器は提供されていない。ゼレンスキー大統領が要望した戦闘機については、提供を断念というニュースもあり、ドイツの軍需企業KMWが提供できる用意があるといったゲパルト自走対空砲の供与も無さそうだ。大型兵器の提供はロシアから参戦と見なされる可能性があり、巻き込まれる懸念を考え各国は及び腰になっている。そんな状況でウクライナ軍の大型兵器は徐々に消耗しているのでは?と思ったが実はロシア軍の侵攻後、ウクライナ軍は数百両もの地上車両を手に入れてる。実はこれら全てロシア軍から鹵獲したものだ。
約400両のロシア軍車両を鹵獲
ウクライナの発表によれば、2月24日から3月9日までにロシア軍は軍事車両約2000台の損失を出している。これには破壊だけではなく、ロシア軍が放棄、そしてウクライナ軍が鹵獲したものも含まれる。これらロシア軍の車両の損失の実態を軍事情報を分析するORYXがSNSなどに投稿される映像や画像をもとに調査している。
ORYXの調査によれば969両の車両を確認(3月10日時点)、調査。その内訳は以下になる。
破壊:386、損傷:13、放棄:158、鹵獲:412
驚くべきは鹵獲が半数近くに上ることだ。ロシア軍は今回、短期決戦を目論んで十分な補給体制を組んでいなかったとされ、道中ガス欠するケースが多いとされている。また、ロシア軍の士気が低く、車両を捨て逃亡または投降するケースが多いことも理由と考えられる。兵器や武器を放棄する際は敵に鹵獲、再利用されることを防ぐため破壊して使用できなくするのが一般的で、米軍もアフガニスタンから撤退する際は空港に残す車両や航空機は破壊していった。しかし、今回のロシア軍はそれをしていないケース多く見られ兵士の未熟さが目立つ。
防空ミサイルシステムも鹵獲
鹵獲された車両の内訳で最も多いのがなんと戦車で、その数は70両以上にも上る。燃費が悪い戦車はガス欠が多かったのでは思われる。車両別で最も多いのがT-72になるが、その中には比較的新しいT-90Aも数両含まれる。
多連装ロケット砲については、BM-21 Gradが少なくとも7両鹵獲されており、その中にはロケット弾がフル装填されたものがあった。さらに燃料気化弾を使用するTOS-1も1両が鹵獲されている。
また、ウクライナ軍にとっては最もありがたいと思われるのが、自走式地対空ミサイルシステムだ。ウクライナ軍も使い慣れたTorミサイルシステムシリーズだけで3両を鹵獲しており、おかけで防空網を強化できる。
さらにロシア軍内でも最新鋭とされるPantsir-S1も3両鹵獲している。Pantsir-S1はこれまでウクライナ軍は持っていなかったが過去にアメリカが中東で放棄された車両を入手したされており、分析したアメリカが使用方法を知っている可能性は高い。
この他、戦闘装甲車45両、歩兵戦闘車61両、兵員輸送車29両、自走砲10両、機動車両100台以上を鹵獲している。
ロシア軍、ウクライナ軍の車両はほとんどソ連製になり、鹵獲した車両を扱う上では支障はない。使用する弾薬やミサイルも共通しているし、足りなくなれば、周りの旧共産圏の国から補給することもできる。ウクライナ軍は鹵獲したこれらの車両をウクライナカラーに塗装して再配備して、軍備増強している。皮肉なことにロシアがウクライナへ最も武器を供与している国かもしれない。
Source
https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-equipment.html