ロシアは40年前に開発が中断した152mm PAT-S水陸両用自走榴弾砲を復活させます

ロシアは40年前に開発が中断した152mm PAT-S水陸両用自走榴弾砲を復活させます

ロシア国営軍需企業ROSTEC(ロステック)社の傘下であるJSC Kurganmashzavod(クルガン機械工場)社は、40年前に開発が中断した152mm自走榴弾砲「Pat-S」生産施設の近代化に取り組んでいるとロシア政府系メディアのSputnik(スプートニク)が報じました。ウクライナ戦線に投入するためにPAT-Sを復活させるものと思われます。

BMP-3歩兵戦闘車
BMP-3歩兵戦闘車(mod Russia)

152mm  2S18 PAT-S自走榴弾砲は1980年代にクルガン機械工場によってBMP‐3歩兵戦闘車のシャーシをベースに開発された実験的な自走砲です。第9砲兵工場のOKB-9が開発した152mm 2A63榴弾砲を砲塔に搭載。2A63砲は、152mm砲弾のD-1、ML-20、D-20といったすべての種類の弾薬を発射できます。最大射程は弾種にもよりますが13.7 km~15.2 km。搭載弾数は35発。水陸両用であるBMP‐3歩兵戦闘車のシャーシをベースにしていることもあり、PAT-Sも水上を移動することができます。速度などは不明ですが、車体戦闘重量が19トン前後とBMP-3の重量とさほど変わらないため、整地を最大速度70km/h、水上を10km/hとBMP-3と同等の速度で移動できるものと思われます。乗員5人を乗せての水上走行は問題ないことは試験で確認されています。

しかし、PAT-Sは実用化されませんでした。理由は弾道性能が不十分だったためです。そのため、生産されたのは実験用のプロトタイプが1両のみで、開発はストップします。その後、2017年初めまで約30年間ルジェフスキー試験場で保管された後、サンクトペテルブルクにあるロシア連邦国防省砲兵・工兵・通信部隊軍事歴史博物館に移送され、展示されています。

西側の155mm榴弾砲に対抗する為に復活

ウクライナはようやくPzh2000自走榴弾砲を受け取り、戦線に投入へ
ウクライナに提供されているドイツ製のPzh2000(Bundeswehr)

今回、なぜ?40年前に開発が中断したPAT-Sを復活させるのかというと、西側の155mm榴弾砲に対抗するためと推測されています。とはいえ、西側の155mm榴弾砲の最大射程の標準は25km前後なので、PAT-Sの最大射程15kmでは対抗できません。しかし、PAT-Sの2A63砲は152 mm 3OF39M(Krasnopol-M)弾を発射できます。同弾はジェットエンジンを搭載した推進弾で最大射程は25kmと大幅に拡大。且つ、レーザー誘導弾で精度も向上しています。

ロシア軍には西側の155mm榴弾砲に対抗できる2S19ムスタ-Sと2S35 コアリツィヤ-SVの2つの152mm自走榴弾砲がありますが、高コストで量産があまり進んでいません。そこで、BMP-3のシャーシが利用可能なPAT-Sに目をつけたものと思われます。とはいえ、懸念だった弾道性能が改善されるのかは不透明であり、PAT-Sの復活は苦肉の策かもしれません。

Source

‘Pat-S’ Self-Propelled Howitzer Getting Revived in Russia – Developer (sputnikglobe.com)

ロシアは40年前に開発が中断した152mm PAT-S水陸両用自走榴弾砲を復活させます
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG