ロシア、新型300mm多連装ロケット砲「Sarma」を発表

ロシア国防省は、新型の300mm多連装ロケット砲(MLRS)「Sarme」を一般公開した。このシステムは、これまでの「Smerch」シリーズの系譜を受け継ぐ、最新鋭の装輪式MLRSとして注目を集めている。

Sarmeシステムの概要と特徴

Sarmeは、300mmロケット弾を発射可能な新型の重ロケット砲システムであり、その基盤には、高い機動性を誇るKamAZ-635501 8×8 軽装甲高機動トラックのシャシーが採用されている。公開された車両は、6連装の発射装置を搭載しており、これは従来のBM-30 Smerchの12連装やBM-27 Uraganの16連装と比較して、砲身数が半減している。この設計は「機動性の優先」という明確なトレードオフの結果とされており、迅速な陣地転換を可能にするための選択であると考えられる。

射程に関しては、使用されるロケット弾の種類によって変動するが、約20kmから90km程度と報じられている。しかし、精密誘導弾を使用することで、さらに射程が延伸される可能性が示唆されている。同じ300mmロケット砲であるBM-30の誘導弾の最大射程が130kmであることから、Sarmeも同程度の射程を有すると推測される。砲身数の減少は、面制圧攻撃よりも、よりピンポイントな目標攻撃に重点を置いていることを示唆している。Sarmeは、19秒以内に全弾を一斉射撃できる能力を有しており、これは12連装のBM-30の約半分の時間で射撃を完了できることを意味する。

Sarmeは、先進的な自動火器管制システム(FCS)、車載ナビゲーションシステム(GPS)、および発射前後の自動化機構を搭載していると推測される。これにより、移動中の発射地点選定から、発射、データ送受信、そして迅速な離脱までの一連の動作がスムーズに実行できるよう設計されている。これらの自動化機能は、Sarmeの高い機動性と生存性をさらに高める要素となる。

Sarmeは、その高い発射速度と砲身数の削減による軽量化、そして装輪式による機動性を最大限に活用し、攻撃後は直ちに陣地転換を行うことで、敵の反撃を回避する「シュート&スクート」戦術に特化している。Sarme自体の走行性能に関する具体的な情報はまだ不明だが、ベースとなっているKamAZ-63501シャーシは最高速度90km/h、航続距離800kmを誇る。また、この車両はオフロード走行にも優れており、31%の傾斜角度を登坂可能で、14mの旋回半径を持つ。これらの特性は、Sarmeが多様な地形での運用に適応できることを示している。

現時点では、Sarmeの実戦配備は確認されておらず、今回公開されたのはプロトタイプモデルであると推測されている。今後の量産計画などについては、まだ詳細が不明であり、今後の開発動向が注目される。Sarmeがロシア軍の火力をどのように強化し、将来の紛争においてどのような役割を果たすのか、その可能性に期待が集まっている。

ロシア、新型300mm多連装ロケット砲「Sarma」を発表
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