ロシア軍が激戦地のウクライナ東部アヴディウカ地域の前線に第二次大戦時に使用されたGAZ-AAトラックを投入したこと確認された。
これまで、古の兵器を数々投入してきたロシア軍。今年に入ってからはT-54/55戦車といった戦後まもなく開発された第一世代戦車を投入しているのが確認されている。ただ、MT-LB装甲車やBMP-1歩兵戦闘車といった装甲戦闘車は他の途上国でも未だ現役で使用されており、そう珍しいことではなく(世界2位の軍事大国ロシアが使用するのはあれだが)。しかし、今回確認されたのはそれよりも古い第二次世界大戦前に開発された非戦闘車両のトラックである。
画像は不鮮明で分かりづらいがこれはGAZ-AAトラックとされている。このトラックは1930年代にアメリカのフォード・モデルAA1930年型をライセンス生産する形でソ連で生産が始まったトラックだ。1932年には最初の車両が完成。1938年にはエンジンを改良したGAZ-MMの生産も始まっている。国産のGAZ-63トラックの量産が1948年に始まると、GAZ-MMは1950年に生産を終了。それまでに約100万台が生産された。つまり、最も新しい車両でも70年以上が経っている。軍用と言えど、トラックだ。物持ちが良いロシア軍と言えど、まさか半世紀以上前のトラックまで予備役として保管していたなら驚きだ。
しかも、それが確認されたのが後方ではなく、ウクライナ東部ドネツク州のアヴディウカ地域だ。ここは現在、最も激しい戦闘が行われている地域であり、ここに設けられたウクライナ軍の要塞を落とすため、ロシア軍は連日総攻撃をかけている、まさに最前線でウクライナ軍が確認できる範囲でGAZ-AAトラックの使用が確認されたのだ。このことから、ロシア軍が輸送車両についても困窮していることが分かる。ロシア軍はこれまで少なくとも約3000両のトラックを損失している。実際はその2倍とされており、民間用トラックも動員しているのでカウントされていないものもある。これまで多くの民間用トラック、バンが電車で輸送されているのが確認されている。
ロシアの国内車両産業は現在、戦車と戦闘車両の生産に全振りしており、トラックの製造まで追いついていないとされる。民間から徴集すればいいと思うが、それでは国内物流が滞る。海外から輸入しようとも経済制裁でそう簡単ではない。そこで、倉庫に眠っていたGAZ-AAトラックを引っ張りだしてきたのであろう。しかも、激戦地のアヴディウカに投入していることから、ロシア軍のじり貧が伺える。ここでロシア軍は一日で50両以上の戦車、数千人の兵を失ったと言われており、なりふり構わない攻撃が続いている。